おはようございます。
練馬区議会議員の佐藤力です。
今回は、いま注目が集まっている「東京23区のごみ有料化」について、
都知事発言の位置づけと、議論の前提になる数字(ごみ量・最終処分場・清掃工場建替コスト)を整理しながら、最後にメリット・デメリットと論点をまとめます。
結論から言うと、有料化は「賛成/反対」の二択で終わらせるのではなく、
目的・方式・逆進性・不適正排出対策・巨大コストの説明という“論点セット”で考える必要があります。
目次
- 1)小池都知事の“有料化”発言は何だったのか
- 2)東京23区のごみ量はいまどうなっているのか
- 3)最終処分場(埋立)の“残り”はどれくらいか
- 4)清掃一組の事業費:建替という巨大投資
- 5)有料化のメリット・デメリット/議論するなら論点は何か
1)小池都知事の“有料化”発言は何だったのか

まず大前提として、都知事の発言は「明日から23区で有料化します」という話ではありません。
2026年1月9日の定例記者会見で小池都知事は、多摩地域では有料化が進んでいること、また全国で有料化の事例が広がっていることに触れつつ、23区でも有料化の意義・効果や事例を示して、ごみ減量を進めたい趣旨を述べています。
同時に大事なポイントとして、知事は「決めるのは区」という趣旨も明確にしています。
つまり「都が一律に決める」というより、23区側の意思決定として議論の“土俵”を示した、という位置づけです。
2)東京23区のごみ量はいまどうなっているのか
次に現状です。東京23区の「ごみ量」は、ざっくり言うと
- ① 区が集めるごみ(区収集)
- ② 清掃工場などへの持込(持込ごみ)
で整理できます。

令和6年度(2024年度)の合計は 2,452,603.68トン(約245万トン)で、前年差は▲1.3%です。
内訳は区収集 1,611,865.64トン(約161万トン)、持込 840,738.04トン(約84万トン)となっています。
| 区分 | 令和6年度(t) | ざっくり |
|---|---|---|
| 区収集 | 1,611,865.64 | 約161万トン |
| 持込 | 840,738.04 | 約84万トン |
| 合計 | 2,452,603.68 | 約245万トン |

直近の流れとしては、コロナ期に「持込」が落ち込み、その後戻ってきて、合計は大きくは増えず横ばい圏、という見方ができます。
だからこそ、有料化を議論するなら「総量」だけでなく、内訳(区収集/持込、可燃/不燃/粗大)まで見て議論する必要があります。
3)最終処分場(埋立)の“残り”はどれくらいか
23区のごみは、清掃工場などで中間処理したあと、最終処分(埋立)は東京都に委託して行っています。

ここで重要なのが、最終処分場は当然ながら有限であるということです。
(1)「残余容量(あとどれくらい入るか)」という見方
東京都の公表資料では、残余容量(m³)が示されています。
たとえば測定日ベースで見ると、
- 中央防波堤外側埋立処分場:残余容量 1,882,000m³(2024/2/3)→ 1,900,000m³(2025/2/14)
- 新海面処分場:残余容量 9,693,000m³(2024/2/3)→ 9,522,000m³(2025/2/14)
この2つを足し合わせると、直近では合計で約1,142万m³が“目安”になります。
(2)寿命を単純計算する際の注意点
よく「残余容量 ÷ 年間の埋立体積」で寿命を見積もりますが、実際には
- 測定のタイミング
- 沈下などで“容量の見え方”が変わること
- 埋立に回る量が年によって上下すること
などがあるため、あくまで目安です。
ただ、有限である以上、減量・資源化・最終処分量の抑制は避けて通れません。
4)清掃一組の事業費:建替という巨大投資
もう一つ、大事な論点が「清掃事業にかかる費用」です。東京23区の清掃工場は老朽化が進み、いままさに建替え・更新の時代に入っています。

清掃工場の建替えは事業規模が大きく、1件あたり数百億円単位になるのが一般的です。
| 案件 | 契約金額(円) | ざっくり |
|---|---|---|
| 目黒清掃工場 建替工事 | 51,470,640,000 | 約514.7億円 |
| 北清掃工場 建替工事 | 60,758,500,000 | 約607.6億円 |
さらに、江戸川清掃工場の環境影響評価のQ&Aでは、同じ処理能力で契約した目黒清掃工場の契約金額が約515億円だと説明したうえで、工期が長期化する要因として、
- 解体時の全覆い仮設テント
- 外壁のアスベスト含有建材の除去
- 高さを抑えるための地下掘削量の増加
- 軟弱地盤対策(杭工事)
などが挙げられています。つまり最近の清掃工場は、単に「焼却する施設」ではなく、周辺環境への配慮、解体時の飛散防止、地盤・水害対策、災害対応、環境性能など、求められる水準が高まりやすい構造です。
この巨大投資をどう説明し、区民負担の納得感をどう作るか――ここは、有料化議論とも必ず接続します。
5)有料化のメリット・デメリット/議論するなら論点は何か
ここまでが、清掃事業の基本情報です。
それを踏まえて、ここからが本題。
「ごみの有料化は、善なのか悪なのか」です。
有料化は一般に、いわゆるPAYT(Pay-As-You-Throw/出した分だけ負担する従量課金)の仕組みで、行動変容を促しやすい“強いツール”だと言われます。
ただし、効果も副作用も、制度設計次第です。

メリット(期待できること)
- ① 残渣ごみ(燃やすごみ等)の減量
料金設定や対象、同時に行う分別・回収施策によって効果は変わります。 - ② 負担の公平性(多く出す人が多く負担)
税方式よりも排出量に応じた負担に近づけやすい、という考え方があります。 - ③ 最終処分場の延命・温室効果ガス抑制(副次効果)
最終処分量が抑えられれば、延命や副次的な効果にもつながり得ます。

デメリット(副作用・課題)
- ① 逆進性(低所得世帯ほど負担感が大きい)
減免制度、一定枚数の無料配布、子育て世帯(おむつ等)への配慮など、設計が重要です。 - ② 不適正排出のリスク(不法投棄・越境投棄など)
監視、回収導線の整備、周辺自治体との調整とセットで考える必要があります。 - ③ 「減った」の中身を分けて見ないと誤解が生まれる
“本当に発生が減った”のか、“資源回収へ移った”のか。KPIを総量だけにすると議論がブレやすいので、内訳で追う必要があります。 - ④ 行政コスト(袋の流通、周知、苦情対応、減免運用)
導入して終わりではなく、運用を回し切る設計が要になります。
議論するなら、論点はこの5つ
以上を踏まえると、有料化を考えるうえで、論点は大きく5つに整理できると思います。

- 目的は何か?
(減量なのか、資源化なのか、財源確保なのか、最終処分場の延命なのか――狙いを明確にする) - どの方式にするのか?
(従量制か、無料枠を設けるか、料金水準をどうするか、指定袋の設計をどうするか) - 逆進性への配慮をどう組み込むか?
(減免制度、一定枚数の無料配布、子育て世帯・おむつ等への配慮など) - 不適正排出をどう抑えるか?
(監視体制、回収導線、周辺自治体との広域調整をどう整えるか) - 清掃工場建替などの“巨大コスト”をどう説明し、区民負担の納得感をどう作るか?
(費用の見える化、必要性の説明、負担のあり方の合意形成)
まとめ
小池都知事の発言は、23区に一律で有料化を押し付けるものではなく、「決めるのは区」という前提で、議論の土俵を示したものです。
一方で、議論の前提になる数字として、23区のごみ量は令和6年度で約245万トン。最終処分場には残余容量があり、清掃工場は建替えで数百億円規模の投資が続きます。
だからこそ、有料化を議論するなら、賛成・反対の二択で終わらせず、
「目的」「方式」「逆進性」「不適正排出対策」「巨大コストの説明」という5つの論点で、丁寧に検討を重ねることが必要だと考えます。
皆さんのご意見も、ぜひお寄せください。




