こんばんは。
練馬区議会議員の佐藤力です。
今週の佐藤力チャンネルのテーマは、「練馬区の児童相談体制」についてです。
なぜ都内各区で児童相談所が立て続けにつくられているのか。練馬区の今後の対応はどうなるのか。などについてお話していきます。
●児童相談体制
さて、子供たちを虐待から守る上で大変重要な役割を担っているのが「児童相談所」です。
都内の児童相談所は、これまですべて東京都が運営していましたが、2016年に児童福祉法が改正され、特別区でも設置することができるようなりました。
練馬区は、東京都の福祉行政の経験が長い前川区長の考えで、区立の児童相談所の設置は考えていませんでしたが、他の22区においては設置の意向を示していました。
これまでに世田谷区、江戸川区、荒川区、港区、中野区の5区で開設され、2022年度中には板橋区や豊島区の2区が、2023年度以降には葛飾区や品川区など少なくとも5区が開設予定となっています。
しかしながら、大きな課題があり、すべての区が順調に開設できているわけではありません。
国は児童相談所に対する専門人材の配置基準を人口比などに基づいて細かく定めており、児童相談所を新設する自治体によって、激しい人材の争奪戦が繰り広げられています。
そもそも児童相談所に必要な児童福祉司を持った方は多くはなく、また、高い専門性と強い精神力がなければ務めることが難しい仕事です。
私の知人に、児童相談所職員になりたくて、公務員になり、現在、児童相談所の職員をしている方がいます。
精神的に強い方ではありますが、「オンオフの切り替えをしっかり行っていなければ精神的にまいってしまう」と言っていました。
現在、それぞれの区では職員を東京都の児童相談所に派遣して経験を積ませるなどしていますが、人材育成には時間がかかります。
実際、文京区や品川区などの多くの区が人材難を理由に開設時期を延期しています。
また、課題は人材難以外にもあります。
児童相談所を開設するためには、児童相談所や一時保護所が入る施設を整備したり、運営したりする必要があり、多額の財政負担があります。
江東区は、区内にある都の施設を借りようとしていますが、協議は難航しており、当初、2025年度に予定していた開設時期を未定としています。
さらに、新設を計画していた渋谷区や墨田区は、計画を先送りにし、都の児童相談所との連携強化に舵を切っています。
●練馬区における児童相談体制
その中で、当初より区立の児童相談所を開設しないことを明言していた練馬区はどうかというと、2020年から都の児童相談所のサテライトオフィスが、練馬区子ども家庭支援センター内に設置され、児童虐待などへの対応を強化してきました。
さらに、2024年度に、33年ぶりとなる、都立の児童相談所が練馬区内に開設されるなど、さらに児童相談体制の強化を図っていきます。
そもそも児童相談所の管轄区域は、2019年の児童福祉法施行令の改正によって、「人口が基本としておおむね50万人以下」であることとされました。
また、厚生労働省の通知によって、「目安としては管轄人口20万人から100万人までの範囲」として基準が示されています。
現在、練馬区を管轄している都の児童相談所は、新宿区や渋谷区なども管轄しています。
管轄人口は227万人以上で、厚生労働省の通知の基準の倍以上となっており、対応が急務となっています。
しかしながら、他の区が直面している人材難や財政負担といった課題はすぐに解決できるものではなく、また、そもそも児童相談所は、虐待相談対応以外にも、児童養護施設や里親への対応、一時保護所の運営などがあり、広域的、専門的な対応が求められます。
都の児童相談所による広域的、専門的な支援と、練馬区の子ども家庭支援センターを中心とした地域単位のきめ細やかな支援とが連携してこそ、真に強い児童相談体制を築くことができます。
今回、都の児童相談所が、練馬区の子ども家庭支援センターと同一施設内に設置されるということで、児童相談体制がさらに強固なものになると考えています。
引き続き、子供たちが安全安心に暮らせる社会の実現に向けて尽力してまいります。