おはようございます。
練馬区議会議員の佐藤力です。
東京都と特別区(東京23区)の間で行われる財源調整「都区財政調整制度」について、令和7年度の協議結果をもとに解説します。
特に児童相談所の財源負担や子供医療費助成の変更など、区民生活に直結する重要なポイントを押さえます。
都区財政調整制度とは?
都区財政調整制度は、東京23区の税収格差を是正し、どの区に住んでいても一定の行政サービスが受けられるようにするための仕組みです。
例えば、商業地域が多く法人税収入の多い千代田区と、住宅地が中心で税収の少ない練馬区では、税収に大きな差があります。このままだと、税収の多い区では充実したサービスが提供できる一方、税収の少ない区では必要な行政サービスの維持すら難しくなります。
この問題を解決するために、東京都が23区の固定資産税や法人住民税などをいったん徴収し、特別区の行政サービスの必要性に応じて再配分する仕組みが生まれました。
令和6年度協議が難航した理由
令和6年度の協議では、特に児童相談所の運営費負担を巡り、東京都と特別区が激しく対立しました。
- 特別区側の主張:「児童相談所を運営する負担が増えているのだから、財源配分を増やすべきだ」
- 東京都の主張:「財政調整制度は基準財政収入と基準財政需要の差を埋める制度であり、特定の事業の負担増を理由に配分割合を変えるべきではない」
この対立の影響で、都区財政調整交付金の条例改正案が提出できない事態にまで発展しました。最終的には、児童相談所の事務整理を行うプロジェクトチームを設置し、配分割合の変更問題を棚上げすることで合意しました。
令和7年度協議の合意内容
令和7年度の協議では、以下の5つのポイントが議論されました。
1. 児童相談所の財源負担
東京都と特別区の意見対立が続いたものの、最終的に特別区の配分割合を56%に引き上げ、特別交付金の割合も6%に増加することで合意しました。
2. 特別交付金の配分割合
特別区側は「普通交付金を増やし、特別交付金を2%に引き下げるべき」と主張しましたが、東京都は「特別交付金は各区の事情に対応するための重要な財源」として、6%を維持することになりました。
3. 子供医療費助成の算定基準
これまで所得制限が設けられており、各区がその負担をしていましたが、特別区側の要望が通り、令和7年10月から所得制限を撤廃することが決まりました。これにより、多くの家庭が子供の医療費助成を受けやすくなります。
4. 都市計画交付金の拡充
特別区は「交付金の総額を増やし、すべての都市計画事業を対象にするべき」と求めましたが、東京都は「現在の仕組みで適切に運営している」として譲らず、合意には至りませんでした。
5. 建築単価の見直し
特別区側は「特別区の実態に即した建築単価を設定すべき」と提案しましたが、東京都は「標準建物予算単価を基準とすべき」と主張。最終的には、現行モデルを改良する形で合意しました。
今後の課題と展望
課題①:特別交付金の決定プロセスの透明性
特別交付金の金額決定プロセスが不明瞭で、各区に情報開示がされないため、ブラックボックス化している問題があります。今後は、より透明性の高い決定方法が求められます。
課題②:東京都の財政余力と配分割合
東京都は、大枠の予算を確保している一方で、詳細が詰まっていない事業にも多額の予算を計上しているケースが見られます。このため、特別区側としては、より多くの財源を確保し、住民サービスを充実させることを引き続き求めていく必要があります。
まとめ
令和7年度の協議では、児童相談所の財源負担や子供医療費助成の所得制限撤廃など、区民生活に関わる重要な合意が得られました。しかし、都市計画交付金の拡充や特別交付金の透明性向上など、まだ解決すべき課題は多く残されています。
引き続き、都と特別区の協議がどのように進むのか、注目していきたいと思います。
