こんにちは。
練馬区議会議員の佐藤力です。
今回は、交通対策等特別委員会の視察1日目として伺った、 鳥取県鳥取市の「相乗り型公共交通・とりモビ」についてご紹介します。
人口減少や高齢化が進む中、地方都市がどのように持続可能な移動手段を確保しているのかを視察してきました。

目次
1.鳥取市の概要
●基本情報
- 所在地:鳥取県東北部(県庁所在地)
- 面積:約765.66km²
- 人口:約18万人(2025年10月現在)
- 気候:日本海型気候。年間平均気温14.9℃、降水量約1,745mmで曇りや雨が多い地域
●地形・自然
北は日本海、東に久松山、西に湖山池と、海・山・湖がそろう自然豊かなまちです。
特に「鳥取砂丘」は日本最大級の砂丘として全国的にも有名です。
●産業構造
- 第1次産業:約4,000人
- 第2次産業:約1.8万人
- 第3次産業:約6.3万人
サービス業中心の構成で、「農業」「教育」「公務」が比較的強みの分野。
一方、「情報通信業」「不動産業」は全国平均より低い傾向です。
●課題と展望
20〜30代の転出が課題となっており、地域経済を支える中小企業の活性化や、 観光・情報通信分野の成長促進が期待されています。
●特産品と観光
- 松葉ガニ:11月〜3月。県を代表する冬の味覚。
- 二十世紀梨:8〜10月に旬を迎える“梨の本場”。
- 砂丘らっきょう:10〜11月に花が咲き誇る。GI登録の特産品。
観光名所:
鳥取砂丘・砂の美術館、鳥取城跡・仁風閣(桜の名所)、市街地の鳥取温泉、国内最大級の池「湖山池」など、 自然と歴史が調和した地域です。
2.相乗り型公共交通「とりモビ」
●導入の背景

鳥取市では、人口減少に伴いバス利用者数が大幅に減少。
「バス便数の減少 → 利用者減 → さらなる便数減少」という負のスパイラルが課題でした。
そのため、タクシー不足や交通空白地域を補うために相乗り型公共交通「とりモビ」の実証実験が始まりました。
3.実証運行の概要


- 運行期間:令和5年10月〜令和6年2月、令和6年5月〜
- 運行時間:8時〜22時
- 運行区域:鳥取駅南エリア
- 乗合ポイント:約200地点(商業施設や目印地点)
- 運賃:400円/回(回数券・30日サブスク5,000円)
- 車両:10人乗り車2台
- 予約方法:アプリまたは電話
「移動の自由度を高め、地域経済の活性化につなげる」ことを目的とし、 国土交通省の共創モデル実証プロジェクトとして実施。
地域企業との連携による協賛やサービス提供も行われています。
4.成果と課題

●利用実績
- 月最大利用者数:令和6年 1,210人(目標1,400人の約86%)、令和7年 1,769人(目標1,700人の104%)
- 会員数:1,445人(アクティブユーザー約230人)
- 利用者の年齢層:60代が18%、女性利用67%
- 利用ピーク:朝8〜9時、夕方16〜18時(特に17時台)
●収支・運営
- 収支率:令和6年度15.2% → 令和7年度19.1%
- 平均収入:約40万円/月
- 長期目標:人件費に対する収支率50%
運営経費は年間約2,400万円で、国の補助金(共創プロジェクト(3/4)・デジタル田園都市補助金(1/2))を活用。その残りを県と市が分担して費用を負担しています。
5.今後の展望



●令和7年度の方向性
- バス・タクシーとの役割分担を再整理し、本格導入の可否を検証
- 福祉施設との連携による「お買い物ツアー」など新たな取組を実施
●課題と期待
- タクシー・バス事業者との共存ルールの確立
- ドライバー高齢化への対応と人材確保
- 利用拡大に向けた利便性・認知度の向上
- 行政支援の意義づけと財源確保
6.まとめ:地域主導の「共創型交通」へ
「とりモビ」は、単なる移動手段ではなく、地域住民・行政・企業が共に支える“共創型交通”のモデルです。
なお、「とりモビ」以外にも、日本版ライドシェアが鳥取市内61地区のうち7地区のまちづくり協議会が中心となり、交通課題を抱える地域から自主的に取組が始まっています。
費用は1回200円で、日野自動車が運行管理を行い、その費用を市が負担しています。
移動の自由を守り、地域の活力を生み出すための挑戦。
今後の練馬区の地域交通施策を考える上でも、大変参考になる事例でした。




