おはようございます。
練馬区議会議員の佐藤力です。
今回は「新築マンションの短期売買(いわゆる転売)」と「国外に住所がある人による購入」の実態について、国土交通省の最新調査をもとに、できるだけわかりやすく整理します。
ニュースやSNSでは「都心のタワマンは外国人が爆買い」「転売目的の投資が急増」など、イメージが先行しがちです。
しかし、今回の調査は登記データにもとづく分析です。まずは数字で全体像をつかみ、その上で論点を冷静に考えていきましょう。
目次
1. 今回の調査は何を調べたのか?
まずは調査の前提を押さえます。

- 対象:三大都市圏(東京圏・大阪圏・名古屋圏)+地方4政令市
- 期間:2018年1月〜2025年6月に「保存登記」された新築マンション(約55万戸)
- データ:法務省の不動産登記情報+民間の価格データ(価格帯分析に使用)
主に見ているのは次の3点です。

- 購入後1年以内に売られた「短期売買」がどれくらいあるか
- 国外に住所がある人の取得がどれくらいあるか
- 都心6区(千代田・中央・港・新宿・文京・渋谷)で価格帯別にどんな傾向があるか
注意点として、短期売買(購入後1年以内)を判定するには「1年分の経過」が必要です。
そのため、この調査の短期売買の“直近”は、主に2024年上期(1〜6月に保存登記された物件)が使われています。
2. 新築マンションの「短期売買」の実態

ここでいう短期売買とは、「新築で買ってから1年以内に別の人へ売られたケース」です。

結論から言うと、短期売買は東京・大阪などの都市部、その中でも中心部ほど高い(または増加しやすい)という傾向が確認されています。
(1)まずは“直近の水準”を数字でつかむ
国交省資料の代表的な数値(直近の区分)を、ざっくり整理すると次の通りです。
| エリア | 短期売買割合(直近:2024年上期) |
|---|---|
| 東京都 | 8.5% |
| 東京23区 | 9.3% |
| 都心6区 | 12.2% |
| 大阪府 | 6.2% |
もちろん「これが高いか低いか」は議論が分かれますが、少なくとも中心部ほど割合が高いことはデータに出ています。
(2)“全国一律で急増”ではなく、地域差が大きい
大事なのはここです。
「どこでも投機的な転売が急増している」というより、都市部・中心部に偏って出やすい構図です。
さらに国交省も、短期売買の割合は、その年にどんなマンションが供給されたか等によって大きく変動しうる、としています。
数字を見るときは、単年の上下だけで断定しないことが重要です。
3. 国外に住所がある人による購入の状況
次に「国外に住所がある人」の新築マンション取得です。
登記簿の住所欄が「国内住所」か「国名を含む国外住所」かで整理し、割合を出しています。

結論としては、中心部ほど割合が高い一方で、全体に占める割合は数%という水準です。
(1)直近(2025年上期)の代表的な数字
| エリア | 国外住所者の取得割合(直近:2025年上期) |
|---|---|
| 東京圏 | 1.9% |
| 東京都 | 3.0% |
| 東京23区 | 3.5% |
| 都心6区 | 7.5% |
この数字から言えるのは、「中心部ほど高い」こと。
一方で、東京圏全体では2%弱というように、“街全体が外国人に買われている”というイメージとはギャップがある、ということでもあります。
(2)練馬区はどうか(参考)
同じ表の中では、練馬区の国外住所者の取得割合は、直近(2025年上期)で0.3%とされています(年による変動あり)。
都心部と同じ目線で語るのではなく、エリア別に実態を見て議論することが重要です。
(3)国・地域の内訳は?
東京23区については、国交省資料の中で、国外住所者の登記件数(国・地域別)にも触れられています。
- コロナ禍以前より件数は減少し、ここ数年は300件前後
- 国・地域はコロナ禍以前から中国・香港・台湾が多い
- 直近では台湾が最も多い
- シンガポール、米国、英国なども一定数ある
※ここでの分類は登記に記載された住所にもとづく点に注意が必要です(国籍そのものは登記から分かりません)。
4. 都心6区と大規模マンションのポイント
続いて、調査の中でも示唆が大きいポイントを2つ紹介します。
(1)都心6区:高額帯に国外住所者が偏っているわけではない
都心6区については、価格データと突合して価格帯別の傾向も見ています。
ポイントは次の通りです。
- 都心6区で購入されている新築マンションは、1億円未満が過半数
- 2億円以上は1割未満
- 国外住所者の購入割合は、価格帯ごとに見ても0〜3%程度で、特定の高額帯に偏っている傾向は特に見られない
つまり、「2億円以上の超高額物件が、国外住所者に買い占められている」といったイメージを、少なくともこの調査結果だけで断定するのは難しい、ということです。
(2)東京23区:大規模マンションで短期売買が目立つ
もう1つは「大規模マンション」です。国交省は、1棟あたり保存登記100件以上を大規模マンションとして分析しています。

- 東京23区(専有面積40㎡以上)では、大規模マンションが全体の約6割
- 短期売買数は、大規模マンションが8割以上
- 直近(2024年上期)の短期売買割合は、大規模マンション9.9%/それ以外3.3%
駅近・大規模物件は、供給戸数が多く、投資目的の購入も一定数入りやすい——こうした背景があるのだと思います。
5. 私の考えと、今後の論点
最後に、今回の調査結果を踏まえた私の考えと、今後の論点です。
(1)「感覚」ではなく「データ」で議論する

短期売買や国外住所者の取得は、中心部ほど高くなる傾向が出ています。
一方で、全体に占める割合は多くが数%であり、「すべてが外国人投資家のせいだ」といった極端な議論は、冷静さを欠くと感じます。
データが示す事実を押さえた上で、落ち着いて制度設計を議論することが必要です。
(2)ただし、この調査にも“限界”がある

今回の調査は「国外に住所がある人」を切り口にしています。
そのため、例えば次のようなケースは、同じ意味では把握できません。
- 日本国内に住所を持つ外国籍の個人
- 日本国内に登記住所を置く、外国資本の法人・ファンド
また、登記情報だけでは国籍そのものを特定できません。
つまり、この調査は「外国人による取得の全体像」ではなく、“国外住所者”に限った一部の切り口である点は、正しく理解する必要があります。
(3)今後の論点(例)
住宅政策や投資規制などを本格的に議論するなら、例えば次の論点が重要になります。

- 短期売買が、周辺の家賃・分譲価格にどの程度影響しているのか
- 地元で長く暮らしたい人が、価格高騰で選択肢を失わないようにするには何が必要か
- 税制や住宅政策(固定資産税・不動産取得税・空き家対策等)を、実態に即してどう見直すか
- 個人・法人を問わず、取得主体や保有実態をより精度高く把握できる基礎データ整備
「データを冷静に見る」ことと、「データの限界を正しく理解する」こと。
この両方を大切にしながら、感情論や印象論に流されない議論が求められていると思います。
まとめ
- 短期売買は都市部・中心部ほど割合が高い傾向(東京23区9.3%、都心6区12.2%など)
- 国外住所者の取得は中心部ほど高い一方、全体では数%の水準(東京23区3.5%、都心6区7.5%など)
- 都心6区で「高額帯に国外住所者が偏る」傾向は特に見られない
- 大規模マンションで短期売買が目立つ(9.9%/3.3%など)
- 重要なのは、数字で全体像を見つつ、データの限界も踏まえて論点整理すること
「わかりやすかった」「こういうデータ解説をもっと読みたい」という方は、ぜひコメントで教えてください。
また、「うちの地域ではどう見ればいい?」「制度として何があり得る?」などのご意見も大歓迎です。




