障害年金の審査はなぜ不信を招くのか-「初診日の壁」と「医師判定記録の廃棄」問題をわかりやすく解説

おはようございます。
練馬区議会議員の佐藤力です。

今回は、障害年金の審査をめぐって報じられた「医師の判定記録が廃棄されていた」とされる問題について、わかりやすく整理していきます。

障害年金は、障害のある方の生活を支える大切な制度です。
にもかかわらず、申請の入口でつまずくことが多く、さらに審査の過程が見えにくいことで、「本当に公正に審査されているのか」という不信を招きやすい構造があります。

今回の記事では、前提となる「初診日」の問題から、報道されている「医師判定記録の廃棄」問題、審査の流れ、なぜこうしたことが起きやすいのか、そしてどう直すべきかまで、5つのパートに分けて整理します。

制度を「受給させないための仕組み」ではなく、「必要な人にきちんと届く仕組み」へ変えていくために、何が必要なのか。一緒に考えていきましょう。

目次

1.前回動画の復習 「初診日」って何?
2.「医師判定記録の廃棄」問題
3.障害年金の審査の流れ
4.なぜ不信が生まれやすいのか
5.どう直すべきか

1.前回動画の復習 「初診日」って何?

以前このチャンネルでも、障害年金の申請で多くの方がつまずきやすい「初診日」について解説しました。

初診日とは、その病気やけがで最初に病院を受診した日のことです。

障害年金では、この初診日が非常に重要です。というのも、初診日によって、

  • どの年金制度で判断するのか
  • 保険料の納付要件を満たしているのか

が決まってくるからです。

つまり、初診日が確定しないと、制度の入口の段階で手続きが止まってしまうことがあります。ここがまず最初の大きな壁です。

さらに問題なのは、医療機関のカルテ、つまり診療録は、法律上、原則として5年保存が基本であることです。
精神疾患や内部障害のように、長い時間をかけて症状が深刻化し、生活への影響が大きくなっていくケースでは、いざ障害年金を申請しようと思った時には、初診時の記録が残っていないことも少なくありません。

その結果、「本当に困っているのに、入口で証明できずに止まってしまう」ということが起きる。
この初診日の壁こそが、制度への不信感の大きな火種になりやすいのです。

2.「医師判定記録の廃棄」問題とは何か

そして今回、報道で明らかになったのが、障害年金の審査で、認定医が作成した認定調書、つまり判定記録が廃棄されていたとされる問題です。

ここでまず大事なのは、厚生労働省が現在調査中であり、全容はまだ確定していないという点です。
その前提は冷静に押さえておく必要があります。

しかしそのうえで、たとえ詳細が今後の調査を待つ段階であったとしても、「医師が作成した判定記録が捨てられていた」という事実が報じられたこと自体、制度への信頼を大きく損なう問題であることは間違いありません。

報道ベースでは、厚労省は2025年秋以降の事例などを調査中で、破棄の基準や手順を定めたマニュアルが現時点で確認できていないともされています。

もしこれが事実であれば、申請した側から見れば当然、こう感じるはずです。

  • 医師の判断がなぜ消えてしまうのか
  • 誰が、どの理由で、その判断を無かったことにしたのか
  • 審査は本当に公正だったのか

こうした疑問が生まれるのは当然です。
障害年金のように生活の基盤に直結する制度で、記録の扱いが不透明であることは、極めて深刻です。

3.障害年金の審査の流れ

ここはとても大事なので、障害年金の審査の流れをできるだけシンプルに整理します。

ステップ1 申請

まず、年金事務所などの窓口で申請を行います。

ステップ2 要件の確認

次に、初診日がいつなのか、保険料の納付要件を満たしているかなど、受給資格の前提条件が確認されます。

ステップ3 認定医による判定

その後、認定医が診断書などの書類をもとに、障害等級や支給の可否を判定します。

ステップ4 決定と通知

最後に、支給するかどうか、どの等級になるかが決まり、申請者に通知されます。

今回報道されている問題は、このうちステップ3、つまり認定医が認定調書を作成した「後」に起きたとされています。
報道の構図では、職員が「不備がある」などとしてその記録を破棄し、別の認定医に回していたということになります。

申請者や家族の立場から見れば、これは非常にわかりにくい話です。

  • 最初の医師の判断はなぜ残っていないのか
  • 差し替えが行われたなら、どんな理由だったのか
  • 単なる形式的な修正なのか、それとも実質的な判断のやり直しなのか

ここが見えないからこそ、不信感が一気に高まるのです。

仮に「形式的な不備の訂正」が理由だったとしても、元の記録が残らない運用では、後から検証ができません。
透明性という意味で、これは致命的です。

4.なぜ不信が生まれやすいのか

この問題を考えるうえで重要なのは、「誰か一人が悪かった」で終わらせないことです。
個人の問題として片づけるだけでは、同じことがまた起きます。背景には、起きやすい構造があります。

1.「不備対応」と「判断のすり替え」が紙一重になっている

報道では、「不備があると判断して破棄した」という説明も出ています。
しかし、外から見れば、それが本当に形式的な不備の補正なのか、実質的に判断をやり直しているのかはわかりません。

つまり、制度の外側から見ると、「訂正」と「判断のすり替え」の境界が極めて見えにくいのです。
この曖昧さが、不信を強くします。

2.運用ルールやマニュアルが見えにくい

厚労省側で「マニュアルが現時点で確認できていない」とされるなら、なおさら問題です。
誰が、どの基準で、どのように処理したのかを追えなければ、制度はブラックボックス化します。

制度は厳格であるほどよいのではありません。
厳格であっても、何がどう判断されたのかが説明できなければ、納得は得られません。

3.審査件数が多く、現場に処理の圧力がかかりやすい

障害年金は、申請だけでなく更新も含め、件数が多い分野です。
現場が多忙であればあるほど、「いかに早く処理するか」が優先されやすくなります。

その状態で記録管理が弱ければ、運用の逸脱が起きても止めにくくなります。
忙しさが、透明性の低下を招いてしまう構造です。

4.精神や発達など、書面だけでは判断がぶれやすい領域がある

障害年金の中には、精神障害や発達障害など、書面だけで状態を十分に把握するのが難しいケースもあります。
こうした分野では、認定医の判断が単独で行われ、しかも書類中心になりやすいことで、どうしてもばらつきが生じやすくなります。

だからこそ、判定の経緯や理由を丁寧に残す仕組みが欠かせません。
そこが欠けると、「なぜこの結論になったのか」がわからず、当事者にとっては不透明な制度に見えてしまいます。

5.どう直すべきか

障害年金は、生活の土台を支える制度です。
だからこそ、制度が「落とすための審査」に見えた瞬間に、信頼を失います。

必要なのは、受給させない方向ではなく、受給させる方向へ制度設計を見直すことです。
当事者や家族に寄り添いながら、透明性と納得感を高める改革が求められます。

提案1 記録が必ず残る仕組みをつくる

まず最低限必要なのは、「記録を破棄できない仕組み」です。

  • 認定調書は電子的に管理し、誰がいつ何を修正したのか履歴やログが残るようにする
  • 修正が必要な場合も、原本を消すのではなく、「原本」と「修正後」の両方を保存する
  • 再審査が必要な場合は、複数医師や委員会による確認とし、その理由も記録に残す

正しい審査であっても、記録が残っていなければ信頼されません。
透明性は、制度の根幹です。

提案2 初診日問題では「5年の壁」を現実に合わせる

カルテ保存が原則5年という現行の仕組みは、障害年金の実情と必ずしも合っていません。
障害は、時間がたってから生活への影響がはっきり表面化することも多いからです。

そのため、電子カルテの長期保存を後押しすることや、公的記録をもっと柔軟に活用できるようにすることが必要です。
入口の証明でつまずかせるのではなく、必要な支援につなげる視点が重要です。

提案3 国民年金と厚生年金の違いによる複雑さを減らす

障害年金は、初診日と加入制度の組み合わせによって必要書類や説明内容が変わるため、窓口対応にばらつきが生じやすい構造があります。
その結果、申請者から見ると、「窓口によって言うことが違う」と感じやすくなります。

ここは、全国共通のチェックリストや具体例を整備し、できる限り説明を統一することで改善できるはずです。

提案4 障害者手帳などとの審査基準の整理を進める

障害者手帳と障害年金は、制度の目的が異なるため、完全に同じ基準にするのは簡単ではありません。
しかし、あまりに基準がバラバラに見えると、当事者は非常に疲弊します。

すでに別制度で認定されている内容と、障害年金の審査で重なる部分については、できるだけ評価軸を整理し、整合性を高めるべきです。

提案5 一体条件のもとで審査の簡素化も議論すべき

障害者手帳を持っている方は、すでに別の制度で認定を受けています。
であれば、一定の条件のもとで、

  • 障害年金の追加審査を大幅に簡素化する
  • 原則として自動に近い仕組みを検討する

こうした方向性は、真剣に議論する価値があります。

もちろん、障害年金は保険制度ですから、納付要件、公平性、財源、悪用防止といった論点はあります。
それでも、制度全体の方向性としては、「疑って落とす」のではなく、「支えるためにわかりやすくする」ことに舵を切るべきだと私は考えます。

まとめ

今回は、障害年金の審査をめぐる不信の背景について、

  • 初診日という入口の壁
  • 医師の判定記録が廃棄されていたとされる問題
  • それが審査のどの段階で起きたのか
  • なぜ不信が生まれやすいのか
  • そして、どう制度を直すべきか

という流れで整理しました。

障害年金は、厳格さも必要です。
しかし同時に、透明性と納得感がなければ、制度として信頼されません。

本来、支援制度は、必要な人を疑うためのものではなく、必要な人を支えるためのものであるべきです。
だからこそ、記録が残る仕組み、初診日問題への現実的な対応、窓口説明の統一、既存認定との連携など、制度全体を「受け取りやすく、わかりやすくする」方向へ見直していくことが求められます。

皆さんは、障害者手帳など既存の認定と連携して、障害年金をもっと受け取りやすくする方向性について、どうお考えでしょうか。

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