おはようございます。
練馬区議会議員の佐藤力です。
今回は、葛飾区で視察した「グリーンスローモビリティ」と「地域主体交通」の取組について、6つのパートに分けて分かりやすくご紹介します。
バス路線の減便や廃便が各地で課題となる中、地域の移動をどう支えていくかは、今後の自治体にとって非常に重要なテーマです。特に、高齢者の通院や買い物など、日常生活を支える「生活の足」をどう確保するかは、地域の安心に直結します。
今回の葛飾区の取組は、行政がすべてを担うのでもなく、地域に丸投げするのでもない、非常に参考になる仕組みでした。練馬区で今後検討していくうえでも、多くの示唆があると感じました。
目次
1.グリスロって何?
2.葛飾区の「地域主体交通」ってどんな運行?
3.地域と区役所、それぞれの役割分担
4.無料運賃でも回る“お金の仕組み”
5.実証の成果(利用・安全・地域の評価)
6.課題と、練馬で活かすなら
1.グリスロって何?
まず、「グリーンスローモビリティ」とは何か。

一言でいうと、時速20km未満で公道を走れる電動車を使った、小さな移動サービスです。
ポイントは3つあります。

- Green:電動で環境にやさしい
- Slow:低速だから生活道路に向く、重大事故のリスクも下げやすい
- Small:小回りが利いて、狭い道でも入りやすい
これまでグリスロは、観光地の周遊手段として注目されることも多くありましたが、いまはそれだけではありません。高齢者の通院や買い物など、地域の生活を支える交通手段としての役割が重視されるようになっています。
2.葛飾区の「地域主体交通」ってどんな運行?
今回視察した葛飾区では、地域と行政が協力して「地域主体交通」を運行しています。

特徴は、かなりハッキリしています。
- 利用者の負担はなし(運賃無料)
- 医療機関・商店・郵便局など、日常の用事に直結する場所へ行ける
- 予約なしでも乗れるが、電話予約もできる(満席時は予約優先)
つまり、観光向けのサービスではなく、あくまで日常生活を支える移動手段として設計されていることが分かります。
運行はコースを分けて実施されていて、
- 立石駅コース
- 四ツ木駅コース
という形で、曜日を組み合わせながら動かしています。

また、車両は視察先でも使われていた「TAJIMA NAO-6J」。メーカー公表の仕様では、乗車定員8名(運転席含む)です。
3.地域と区役所、それぞれの役割分担
ここが一番大事なポイントです。

葛飾区のやり方は、「地域が主役で、行政が下支え」になっています。
地域組織(協議会側)が担うこと
- 運転手の確保
- 受付・運行管理
- 日々の運行そのもの
- 協賛金集め(企業・地域からの支援) など
区役所が担うこと
- 運行計画の検討支援
- 警察など関係機関との協議
- 法令面の確認
- 車両の貸与や保険、駐車場などの支援 など
「行政が全部やる」でもなく、「地域に丸投げ」でもない。この“中間の設計”が、非常に参考になりました。
4.無料運賃でも回る“お金の仕組み”
「無料で走るって、結局どこが払ってるの?」
ここは、視聴者の皆さんが一番気になるところだと思います。
視察で伺った話を整理すると、ざっくりこうです。
地域側の負担(主に運営)
- 運転手への有償ボランティア代
- 事務的な運営費
金額的には年間320万円の予算となっており、そのうち、運転手への謝礼は72万円となっています。これらは、町会費や企業協賛などから捻出しているとのことでした。
区側の負担(主に基盤)
- 車両貸出・修理
- 保険
- 駐車場
- 運行補助員・事務員相当の支援 など
つまり、地域が運営を担い、行政が土台を支えるという構造です。
5.実証の成果(利用・安全・地域の評価)
実証運行は、一定期間しっかり回して、数字も出ています。

- 2023年10月〜2024年12月の集計で延べ2,021人が利用、現在では月に300人程度が利用
- 事故0件・交通違反0件
- 住民アンケートでは、運行継続を「希望する」が52%、「どちらでもない」を含めると92%

さらに、利用の中心はやはり高齢者で、特に80代以上で利用率が高い、という分析も出ています。使い道も、観光ではなく、買い物・通院という「生活そのもの」に刺さっているのが特徴です。
つまり、これはイベントではなく、生活インフラに近い存在だということです。その結果を受けて、令和7年度から本格実施となっています。
6.課題と、練馬で活かすなら
もちろん課題も、かなりリアルでした。

視察で伺った課題、そして区の資料にもある課題をまとめると、次の3点です。
課題1:台風・強風など運休時の周知
急な運休のとき、利用者へすぐ伝えるのが難しい。電話対応はできても、現場の負担が大きい。LINE活用も試しているものの、登録が伸びないという課題があります。
課題2:担い手の高齢化・継続性
運転手・運営側が高齢化すると、次世代へのバトンタッチが課題になります。資料でも、運行規模が拡大すると内部事務の作業量が想定以上になる、という指摘がありました。
課題3:暑さ対策
酷暑日は別車両を活用するなど、現場ならではの工夫も必要です。
練馬で活かすなら、ポイントは3つ
最後に、練馬で考えるなら何がポイントか。

練馬区内でもバス路線の減便・廃便が増えており、新しい交通手段の確保が欠かせません。そうした中で、地域主体交通は一つの選択肢であると考えます。
そのうえで、検討が必要なこととして、次の3点が重要です。
1.「地域主体」の設計図を最初に作る
誰が運行主体で、行政は何を支えるのか。この設計図を最初に明確にしておくことが重要です。
2.“無料”にこだわるなら、財源設計がセット
協賛・補助・行政支援。ここを曖昧にすると、事業は続きません。
また、葛飾のケースでは、利用者一人当たりの運行経費は1000円程度となっており、それをどう考えるか。これらの点は、事業の継続性の大きなカギであると考えます。
3.周知と予約の仕組みは“デジタル+アナログ”で二段構え
LINEだけに寄せると取りこぼします。電話も残しつつ、若い世代にはデジタルで巻き込む。この両立が大切です。
まとめ
今回の葛飾区視察を通じて強く感じたのは、地域交通の課題に対して、地域と行政がそれぞれの役割を持ちながら支え合う仕組みが非常に重要だということです。
グリーンスローモビリティは、単なる新しい乗り物ではありません。地域の買い物、通院、外出を支える「生活の足」として、これからますます可能性を持つ取組だと感じました。
一方で、運行主体、財源、担い手、周知方法など、乗り越えるべき課題も明確です。だからこそ、導入するかどうかだけでなく、どう設計するかが極めて重要です。
練馬区でも、バス路線の減便・廃便への対応は待ったなしの課題です。地域の実情に合った新しい交通のあり方として、今回の葛飾区の事例をしっかり研究し、練馬で活かせる形を考えていきたいと思います。




