年収の壁を壊すことはできるのか

こんばんは。
練馬区議会議員の佐藤力です。

さて、今回のテーマは、『年収の壁』についてです。


● 年収の壁

さて、最近、何かと「年収の壁」というワードがニュースなどで出てきますが、そもそも年収の壁とはどういったものなのか。

ご存じの方も多いと思いますが、「年収の壁」とは、会社員や公務員に扶養されている方がパートやアルバイトなどして働く際に、税金や社会保険料などの負担が生じる年収の基準のことを言います。

この壁は様々あり、一般的な例で見てみると、まず100万円で住民税が発生し、103万円で所得税が発生します。
また、働いている企業の規模や働き方によって、106万円または130万円で厚生年金や国民年金などの社会保険料が発生します。
さらに、150万円で配偶者特別控除が減少し、201万円で配偶者特別控除が適用外となります。

このように、年収が一定水準を超えると、税金や社会保険料の負担が発生することなどにより手取り額が減ってしまうデメリットがあります。
その一方、厚生年金への加入により老後に受け取れる年金額が増加したり、健康保険から傷病手当金や出産手当金などの手厚い保障を受けることができたりするなど、メリットもあります。

しかしながら、実態を見てみると、最低賃金の引き上げや人手不足のため、パートの時給は年々上がっていますが、配偶者がいて扶養されているパート労働者の年収はほぼ横ばいとなっています。

野村総合研究所によれば、配偶者のいるパート・アルバイト女性3000人に対して実施したアンケート調査で、6割以上の方が自身の年収額を一定に抑える「就業調整」を実施していると回答しています。

つまり、時給が上がっているのに、年収が上がっていないのは、年収が上がることによって、扶養から外れてしまい、税金や社会保険料の支払いが必要となり、逆に手取りが下がってしまうことを回避しようと、労働時間を調整しているからだとみられています。

また、そのことが、企業の人手不足を加速させる要因となっています。

私の元にも、経営者の方から、「ただでさえ人を雇うのに苦労しているのに、最低賃金の上昇に合わせて、パートの時給を上げると、今いる人たちの労働時間が短くなってしまうため、新たな人材を確保しなければならなくなっている」といった声をいただいています。

そこで政府は、今年の9月に、パートやアルバイトで働く方々が「年収の壁」を意識しないで働くことができる環境づくりを支援する対応策「年収の壁・支援強化パッケージ」を発表しました。

まず、「106万円の壁」対策の1つ目として、保険料負担の軽減のための手当支給や従業員の賃上げなど、従業員の収入を増加させる取組みを行った事業主に対して、従業員1人につき最大50万円の助成金を支給します。

また、2つ目として、被用者保険が適用されていなかった従業員が新たに適用となった場合、事業主は当該従業員に対し、給与・賞与とは別に「社会保険適用促進手当」を支給できるようになりました。
この手当は、被用者保険適用に伴う保険料負担の軽減のための手当であり、新たに発生した従業員負担分の保険料相当額を上限として、最大2年間、当該従業員の標準報酬月額・標準賞与額の算定から除外されることとなります。

さらに、「130万円の壁」対策として、人手不足や繁忙期による一時的な増収により、直近の収入に基づく年収の見込みが130万円以上となる場合でも、一時的な収入変動である旨を事業主が証明することで、引き続き、扶養に入り続けられるようになりました。

以上が「年収の壁・支援強化パッケージ」の内容ですが、正直、どれだけ賃上げによる人手不足を解消できるか、効果は不透明であると考えています。

理由としては、企業の負担が追加で発生するおそれがあることや制度が分かりづらいこと、扶養者が勤めている企業で家族手当(配偶者手当)に所得制限があること、2025年の年金制度改正までの期間限定であることなどが挙げられます。

現在、政府は、年金制度改正に向けて議論を始めています。
今回のような対処療法ではなく、根本的には、社会保険料の自己負担が生じても手取り収入が減らないようにするなど、働く時間が長くなるほど収入が増える制度設計にすべきです。
また、合わせて、扶養者が努めている企業の家族手当についても、配偶者の収入上限を引き上げるなど、制度の見直しも必要であると考えます。

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