おはようございます。
練馬区議会議員の佐藤力です。
10月16日に小学6年生の保護者が提出する「希望票」の締切がありました。
本記事では、練馬区の中学校選択制度の仕組みから現状データ、見えてきた課題、そして今後の方向性まで、区議会議員の視点でやさしく解説します。
目次
① 学校選択制度とは?
練馬区では平成17年度から「区立中学校選択制度」を導入しています。目的は、保護者・生徒の意思をできる限り尊重し、公平で透明性のある制度を実現すること
。簡単に言えば、通学区域に関係なく、希望すれば指定校以外の中学校を選べる制度です。
② 受け入れ人数と抽選
- 通学区域外からの受け入れ上限:原則35人(1学級相当)
- 生徒数が多い学校:20〜25人に制限される場合あり
- 希望者が上限を超えた場合:公開抽選を実施
- 抽選対象者へは個別に郵送で案内
- 結果は区公式サイトでも公表
- 兄弟姉妹が在籍している場合:抽選対象外(自動当選)
③ 制度の背景
原点は平成15年の「21世紀の練馬の教育を考える懇談会」の答申です。そこには今も示唆に富む指針が示されています。
「区立学校の存立基盤は地域であり、地域と共に歩む学校づくりが重要」
「学校は地域の核となるべき存在である」
「学校同士が切磋琢磨し、魅力を高め合うことが必要」
つまり、地域とのつながりを大切にしながら、学校が個性を磨き合う環境を整える──それが制度の出発点でした。
④ 現状とデータ
- 令和7年度の中学校入学者数:5,716人
- 国立・都立・私立中へ進学:23.7%
- 選択制度を使って指定校以外へ:16.5%
- 約4割が指定校以外を選択している状況
- アンケート:55%が制度の継続を希望
⑤ 課題とこれから
課題①:学校説明会の日程が重複
近隣校が同日・同時刻に説明会を実施し、複数校比較が難しいケースが目立ちます。例えば9月13日午後に集中するなど、実質的な選択の障壁になっています。背景として、午前の「学校公開」に合わせて開催する慣行があります。
教育委員会は日程重複回避の通知を行っていますが、現場では改善が不十分。日程分散・オンライン配信・アーカイブ視聴の標準化を提案します。
課題②:選択理由が教育内容ではない
指定校以外を選ぶ理由として、部活動(23.9%)・友人関係(20.1%)・距離(18.5%)が上位。一方、教育方針・校風は5%にとどまっています。たとえば、野球部や吹奏楽部などがない学校では、該当する子供が他校へ流出→生徒数減→活動縮小という悪循環が起きがちです。
課題③:学校の経営力・魅力づくり
解決の鍵は「経営的視点」。校長のリーダーシップで魅力を高め、志願者を増やした自治体の事例(例:千代田区立麹町中、千葉県流山市の公立中など)もあります。練馬区では、多くの校長が日常業務に追われ、魅力発信の時間確保が難しい現状。生徒募集・広報を校長の責任とするなら、その責任を果たせる環境整備(専任担当配置、広報支援、部活動の地域移行との連携等)が不可欠です。
まとめ:公教育の質をどう高めるか
選択制度の本来目的は、区立校同士の切磋琢磨を通じた公教育の質向上です。「近くの区立中で十分に良い教育が受けられる」という実感を広げることが、教育格差の縮小や少子化対策にもつながります。教育委員会・学校・地域が一体となり、子供に最適な教育環境を整えていくことが重要です。
