こんばんは。
練馬区議会議員の佐藤力です。
先日、交通対策等特別委員会として、葛飾区のグリーンスローモビリティ(通称:グリスロ)による「地域主体交通」の取組を視察しました。

高齢者の移動手段確保が全国的な課題となる中、“地域が運行主体”となって支えるモデルは、今後の地域交通を考える上で多くの示唆がありました。視察で伺った内容を整理してご報告します。

地域主体交通とは(葛飾区の考え方)
視察で確認した「地域主体交通」とは、地域組織が運行主体となって車両を運行し、高齢者等の移動手段を確保する取組です。
特徴的だったのは、利用者負担がない(運賃無料)こと。公共交通の空白や、徒歩移動が難しい方の“日常の足”を、地域が支える形です。
役割分担が明確だから回る:地域組織と区役所の役割
この取組が成立している大きなポイントは、地域と行政の役割分担が非常にクリアなことでした。
地域組織(運営協議会等)の役割
- 運転手・事務員の確保
- 運行計画の検討
- 車両運行(現場の運営)
- 協賛金の募集 など
区役所の役割
- 運行計画の検討補助
- 警察協議
- 法令確認(制度面の整理) など
“地域に任せきり”でも、“行政が全部やる”でもない。地域の主体性を軸にしながら、行政が制度・安全面を支える形が印象的でした。
費用負担の仕組み(誰が何を負担しているか)
運行を継続するには財源設計が欠かせません。葛飾区の仕組みは、次のように整理されていました。
地域組織が負担しているもの
- 有償ボランティア代(運転手)(町会費や企業協賛などの収入から捻出)
区役所が負担しているもの
- 車両貸出・修理
- 保険
- 駐車場代
- 有償ボランティア代(運転補助員、運行計画等の事務員) など
立ち上げの経緯:計画→要望→デモ→協議会→実証→本格実施へ
時系列で見ると、段階を踏んで丁寧に前進していることが分かります。
- 令和元年度:区計画として地域主体交通運行を明記
- 令和3年度:デモ走行(地域の町会長たちから要望)
- 令和4年度:「東立石グリスロ運営協議会」設立
- 令和5年度:10月から実証運行開始
- 令和7年度:本格実施
最初から本格運行ではなく、デモ→組織化→実証→本格という順番で、地域の納得感と運営の熟度を上げていった点が参考になりました。
運行の実績:月間300名、1便あたり平均3.5人
- 利用者:月間300名
- 1便あたり:平均3.5人(定員6名)
また興味深かったのは、駅を通るルートであっても、用途は通勤通学よりも、高齢者の通院(整形外科など)が多いという点です。まさに「生活の足」を担っていることが伝わってきました。
運転手体制:登録50人、70歳前後がボリュームゾーン
- 運転手:50人登録
- 年齢層:70歳前後が中心
“地域が地域を支える”モデルである一方、担い手の高齢化=継続性が大きな論点にもなっていました。
車両と制度:運賃無料で「許可・登録を要しない運送」に

- 使用車両:TAJIMA NAO-6J(最高時速19キロ)
- リース代:890万円
そして重要なのが制度面です。運賃を取らない(無料)グリーンスローモビリティとして運行することで、道路運送法上、許可・登録を要しない運送として整理している、という説明でした。
協議会の運営費:予算320万円(人件費76万円)
- 運営費予算:320万円
- うち人件費:76万円
また、初年度に多く集まった協賛金をプールして活用しているとのこと。
安全面:これまで無事故無違反
何より、これまで無事故無違反とのことでした。地域交通は「安全が大前提」です。運行ルール、運転者の体制づくり、運行管理の積み重ねが現場で徹底されている印象でした。
見えてきた課題(現場の悩みはリアル)
1)運休時の周知(台風等)
- 電話対応はあるが、地域の方が対応している
- LINE活用を模索するも、登録者は伸び悩み
2)組織の高齢化と継続性
- 担い手が高齢化し、次世代へのバトンタッチが課題
3)酷暑対策
- 酷暑日はレンタカーを利用する対応も
視察を通じての学び:鍵は「地域主体+行政支援+制度設計」
今回の視察で強く感じたポイントは、次の3点です。
- 地域が主体になれるだけの体制(人・運営・協賛)をつくる
- 行政が制度・安全・調整をしっかり支える
- 運賃無料等の制度設計で、導入ハードルを下げる
地域交通は、単に車両を走らせれば解決する話ではありません。「誰が担い」「どう支え」「どう続けるか」まで含めた総合設計が必要で、葛飾区の実践はその具体例でした。
今後に向けて
高齢化が進む中で、移動の問題は暮らしの質を左右します。今回得た学びを、地域の実情に照らして、持続可能な移動手段のあり方として検討を深めていきます。




