おはようございます。
練馬区議会議員の佐藤力です。
今回は、練馬区立豊渓中学校の統廃合と、これからの公教育について解説します。
豊渓中学校の統廃合問題を考える
練馬区では現在、少子化の影響を受けて区立小中学校の適正配置、いわゆる学校の統廃合が進められています。子供の数が減少する中で、学校の統廃合は避けられない課題の一つです。しかし、今回の豊渓中学校の統廃合計画については、その進め方や地域との合意形成のあり方に大きな疑問が残ります。
拙速すぎるスケジュール
豊渓中学校の統廃合計画は、昨年12月に議会へ報告され、今年1月に地域説明会が行われました。そして、3月には統廃合の決定がなされ、4年後の令和11年度には統廃合が実施される予定です。
わずか4ヶ月で結論を出すというのは、あまりにも拙速です。地域や保護者の皆さんが納得するためには、十分な議論と合意形成のプロセスが必要です。こんな短期間で、地域住民の意見をしっかり反映させることができるのでしょうか?
地域との連携を無視した計画
豊渓中学校では今年度、新たに学校運営協議会が立ち上がり、「コミュニティ・スクール」として地域と連携しながら学校を盛り上げる取り組みが始まったばかりでした。しかし、その矢先に統廃合が突然発表されたのです。
コミュニティ・スクールの目的は、地域と学校が連携しながらより良い教育環境を築いていくことです。しかし、この計画ではコミュニティ・スクール内で統廃合についての議論すら行われていません。このような進め方では、「地域の意見を無視している」と思われても仕方ありません。
豊渓中学校が選ばれない理由と可能性
豊渓中学校の生徒数が減少している要因の一つに、「学校選択制度」があります。この制度のもとでは、生徒が自由に進学先を選べるため、豊渓中学区内の児童が必ずしも豊渓中に進学するわけではありません。
実際に、今年度の学区域内の児童82名のうち、豊渓中に進学したのは38名、割合にして46.3%です。子供がいないわけではなく、豊渓中が選ばれていないということです。しかし、逆に考えれば、学校の魅力を高めることで生徒を集めることが可能だということでもあります。
これからの公教育のあり方
これまで公立学校は「生徒が自然と集まること」を前提に運営されてきました。しかし、少子化が進む現代では、「どのように生徒を獲得するか」という視点が求められます。そのためには、教育の質を高め、特色を打ち出し、選ばれる学校になることが不可欠です。
例えば、区内には入学希望者が殺到している国際バカロレア教育を導入している学校が2校あります。こうした学校と協定を結び、バカロレアの要素を取り入れることも一つの方法です。また、民間出身の校長を登用し、新たな視点を加えることで、学校経営の柔軟性を高めることも考えられます。
現在の公立学校は、公教育という枠組みを意識しすぎるあまり、横並びの教育になっています。そのため、それぞれの学校に個性や特色がなく、「この学校に行きたい!」と思えるような要素が不足しているのが現状です。これこそが、公教育の閉塞感を生み、質の向上を妨げる要因となっているのではないでしょうか。
住民合意を丁寧に進めるべき
すべての方が納得する合意形成を図ることは容易ではありません。しかし、今回の進め方はあまりにも拙速であり、丁寧さを欠いていると言わざるを得ません。
3月22日にも説明会が行われる予定ですが、それだけでは不十分です。特に、説明会という形式では、一方的な説明に終始しやすく、対立構造が生じやすいという課題があります。意見を述べたり質問をしたりすることが難しい方もいるでしょう。
そのため、私は教育委員会に対し、少人数での意見交換会を実施することを求めています。属性やカテゴリを分けた形で丁寧に話し合うことで、より建設的な議論ができるはずです。
まとめ
練馬区は、これから「教育先進都市」を目指していくべきです。そのためには、統廃合を進めるにあたっても、地域との対話を大切にし、住民合意を丁寧に図ることが不可欠です。
また、豊渓中学校のように、生徒数が少なくても魅力を高めることで選ばれる学校になる可能性は十分にあります。今後、公立学校も「運営」ではなく「経営」の視点を持ち、特色ある教育を提供できるような改革が求められます。
少子化の時代において、公教育のあり方そのものを見直し、未来を切り拓いていくために、今こそ真剣に議論を進める必要があります。