おはようございます。
練馬区議会議員の佐藤力です。
先日、練馬区議会自由民主党で「デザイン都市・旭川」を視察してきました。
旭川市のユネスコ認定の背景や取り組みを紹介し、デザインの重要性を考察しています。
先日、練馬区議会自民党で行った視察の中から、「デザイン都市・旭川」の取組みについて解説します。
さて、今回は、内容を2つのポイントに分けて、①デザイン都市、②旭川市の取組みという流れで解説していきます。
旭川市は北海道のほぼ中央に位置し、四季折々の美しい自然環境に恵まれた都市です。人口は約32万人の中核市で、戦前は軍都として発展し、人口が増加してきました。戦後、新たな産業をつくるべく木工業を振興し、これまでタンスなど箱物家具を作ってきました。しかしながら、時代の流れにより年々売り上げが低下してきたため、いすなどの足もの家具にシフトし、デザインを重視するようになりました。
産業は木工業の他、食品加工業や観光などのサービス業が盛んとなっています。そういった背景があり、旭川市は2019年にユネスコ創造都市ネットワークの「デザイン都市」に認定され、世界的にそのデザインと創造性が認められています。
ユネスコ創造都市ネットワークとは、創造性と文化産業を都市の発展戦略に組み込むことを目的とした国際的なネットワークです。このネットワークは、文化の多様性を尊重しながら持続可能な都市開発を促進するために、創造性を活用する都市をつなげています。創造分野には、文学、映画、音楽、クラフト&フォークアート、デザイン、メディアアート、食文化の7つがあり、旭川市は「デザイン」分野で認定されています。
この「デザイン都市」とは、デザインを通じて都市の持続可能な発展を推進する都市が認定されます。この認定を受ける都市は、次の4つの特徴を持っています。
一つ目「デザインの促進」
都市全体でデザインの重要性を認識し、公共空間のデザインやインフラ整備、建築などにおいて高いデザイン基準を維持している。
二つ目「デザイン産業の育成」
デザイン関連の産業を支援し、地元のクリエイティブな才能を育成するためのプログラムや教育機関がある。
三つ目「デザインイベントの開催」
デザインに関連するフェスティバルや展覧会、ワークショップなどのイベントを定期的に開催し、地域の文化やデザインを国内外に発信している。
四つ目「国際的な連携」
他の創造都市と連携し、知識や経験を共有することで、デザインの分野におけるイノベーションを推進している。
デザイン都市は世界で49都市あり、日本国内には神戸市、名古屋市、旭川市の3つの都市が認定されています。
「デザイン」と一言で言っても、皆さんの中で思い浮かべるデザインの定義は異なっていると思います。皆さんの中には、建物や家電のデザインや、ポスターなどのデザインを思い浮かべる方も多いでしょう。旭川市が考えるデザインの定義は、色・物・形といった名詞のデザインにとどまらず、企てる・目論むといった動詞のデザインも含んでいます。
常にヒトを中心に考え、目的を見出し、その目的を達成する計画を立て、具現化する。そこに、ユーザーの感情の裏側にある潜在的ニーズを捉え、イノベーティブな結果を生み出すことを目指しています。
旭川市の取組みとしては、主に5つのことが行われています。
一つ目は「デザイン経営の導入」
デザイン経営とは、デザインの概念や手法を経営戦略に組み込むことで、企業の競争力を高め、持続可能な成長を実現するアプローチを指します。具体的には、製品やサービスの開発、顧客体験の向上、ブランド構築、組織文化の醸成など、企業活動のあらゆる側面にデザインを活用することを意味します。
二つ目は「旭川デザインウィーク」
毎年開催されるデザインフェスティバルで、国内外のデザイナーや企業が集まり、最新のデザインや技術を発表しています。これにより、地域のデザイン産業の振興と国際交流が図られています。
三つ目は「地域資源の活用」
地元の木材を使用した家具や工芸品のデザインを通じて、地域の産業を活性化させるプロジェクトが推進されています。
四つ目は「教育と連携」
旭川市の大学や専門学校と連携し、デザイン教育プログラムを提供しています。また、地元企業と協力して実践的なデザイン教育を行い、次世代のデザイナーを育成しています。さらに、小学校に対して、デザイン思考を学ぶ出前授業を実施しています。
五つ目は「チーフデザインプロデューサーの採用」
月に2~3日、チーフデザインプロデューサーが旭川市に来て、市役所内でデザイン思考を浸透させるための研修やコンサルなどを行っています。
私も練馬区の広報時代、全庁に対して広報コンサルを行っていました。コンサルの肝は、表面的なデザインの良さ、チラシであれば読みやすさを追求するのではなく、根っこは何なのかということを追求することです。根っこは何なのかというのは、そのチラシや事業を通じて、区民の皆さんにどうなってもらいたいか、その目的を明確化し、その目的達成のためにどうすればいいのかをということを一緒に考えていました。
目的やターゲットが不明瞭な事業は、どんなかっこいいチラシを作っても、誰にも伝わりません。逆に、目的等が明確で、その目的達成につながる事業であれば、チラシのデザインがいまいちでも、ある程度はターゲットに伝わります。意外と表面的なデザインに捉われがちですが、大事なのは、そもそもの事業自体であり、それを考えるのがデザイン思考となっています。
この考え方は一朝一夕には身につかず、粘り強く、コンサルを通じて区役所内に伝えていました。ここで大きなハードルとなっていたのは、現場担当者はデザイン思考ができても、それを承認する上司にその思考がないと企画自体が没になってしまうということです。
この点、旭川市の方にお聞きしたところ、同じような悩みを抱えていました。ただ、練馬区と異なる点は、市長自らがデザインやデザイン思考の重要性を訴え、事あるごとにデザインというワードを使っているという点です。さすが、デザイン都市を名乗っている都市だなと感じました。
今後、役所内だけでなく、学校現場にも浸透し、そこで育った子供たちがどんな成長を遂げていくのかが非常に楽しみです。