こんにちは。
練馬区議会議員の佐藤力です。
令和6年9月11日、練馬区議会において、練馬区議会自由民主党を代表して一般質問を行いました。
「一般質問とは」・・・本会議において議員が練馬区の行う行政全般に対して、事務の執行状況や将来の方針、計画あるいは疑問点などについて所信をただすことをいいます。一人の議員が行う質問時間は概ね25分間。答弁と再質問を含め45分間となっています。
● 一般質問の概要
テーマ | 概要 | |
1 | 幼稚園と保育園について | ・幼稚園と保育園に対する現状認識と今後 ・練馬こども園職員に対する家賃補助制度 ・未就学児童の療育と保育の両立 ・保育園の経営支援 |
2 | 教育について | ・中学校の教科書採択 ・教員の質 ・生きる力の教育 |
3 | 学校応援団と学童クラブについて | ・学校応援団の在り方 ・学童クラブにおける長期休業期間中のお弁当の注文 |
4 | 重層的支援体制整備事業と生活支援記録法F-SOAIPについて | ・重層的支援体制整備事業 ・生活支援記録法F-SOAIP(エフソ・アイピー) |
5 | 地域公共交通について | ・バス運転手の確保支援 |
1 幼稚園と保育園について
【質問】「幼稚園に対する現状認識と今後」について
今年、我が国の子供の数は、前年に比べ33万人減少し、1,401万人となり、過去最少を更新しました。総人口に占める子供の割合も、1950年の35.4%から11.3%に低下し、2023年の合計特殊出生率も1.20と最低水準を更新。東京都においては0.99と、ついに1を下回るという衝撃的な状況となっています。
少子化の進展は、日本経済の成長力を低下させ、国民の生活水準の向上を妨げるとともに、年金・医療など社会保障制度の安定性・持続性も大きく揺るがす問題です。今後も急速な人口減少が続けば、将来の労働力が減少するとともに、消費者数も減少し、供給面・需要面の双方から日本経済の将来は先細りとなっていきます。また、日本市場の魅力の低下は、国内における新たな設備投資の減少や、技術革新の停滞、競争力のある人材や企業の流出などを招き、さらなる市場の縮小につながります。自治体においても、人口減少により税収が減少し、行政サービスの廃止や縮小など様々な課題に直面していきます。
練馬区が将来にわたって持続可能な行政運営を実現するためには、我が国の未来を背負っていく子供たちに対して、「教育」という将来への投資を、より一層注力して行っていくことが不可欠だと考えます。
練馬区における3歳から5歳の幼児数は、過去5年間で年平均1.96%減と、少子化の影響を受けつつも緩やかな減少に留まっています。しかし、幼稚園に通う子供の数は年平均6.58%減と急激に減少しています。平成22年と令和5年を比較すると、幼稚園児数は33.4%減少し、一園あたりの園児数は227人から173人へと23.7%減少しています。また、区立・私立を合わせた幼稚園の数は、47園から41園へとなり、6園が閉園しています。
一方で、保育園児数は、平成22年に4,821人だったものが、令和5年には9,240人とほぼ倍増し、幼稚園児の減少分が保育園に流れていることが分かります。この背景には、共働き家庭の増加などの社会的要因に加え、給食費や職員の家賃補助など、幼稚園と保育園に対する支援制度の格差が影響しています。
幼稚園は、これまでも、そして、現在も、練馬の子供たちの将来にわたる人格形成の基礎を培う重要な役割を担ってきました。しかし、現状が続けば、幼稚園児数はさらに減少し、一園あたりの園児数は10年後には100人を下回ることが予想され、経営が立ち行かなくなる園も増えてくると考えます。区として、幼稚園を取り巻く状況や今後の見通しについて、どのようにお考えか、ご所見をお伺いいたします。
【答弁】
少子化の進展や保育ニーズの高まりといった社会的背景により、幼稚園の園児数や園数は減少しており、どの傾向は今後も続いていくと考えています。一方、区が実施した、子ども・子育てニーズ調査では、約3割の保護者が3歳からは預かり保育のある幼稚園に通わせたい意向を持っています。引き続き、練馬こども園化の促進や障害児保育補助などの各種支援を行い、各園がニーズに応える幼児教育・保育を安定して提供できるよう、取り組んでまいります。
【質問】「保育園に対する現状認識と今後」について
保育園児数が急増する中、これまで待機児童が大きな課題となっていました。練馬区は、待機児童の解消を区政の最重要課題の一つとして位置づけ、認可保育所や地域型保育事業など、多様な保育施設の誘致に取り組むとともに、平成28年度から区独自の幼保一元化施設「練馬こども園」を創設し、新規施設の整備や定員拡大を積極的に推進し、この10年間で約9,200人の定員増を実現してきました。その結果、4年連続で待機児童ゼロを達成することができました。
その一方で、練馬こども園を除く保育所等の定員と在籍園児数の過去5年間の推移を見ると、空き定員は1,171人から2,087人へ78.2%増加し、定員充足率は93.3%から89.3%に減少しています。
令和3年5月に厚生労働省が公表した「保育を取り巻く状況について」によれば、保育所の利用児童数は令和7年をピークに、その後は緩やかに減少していくことが見込まれています。いわゆる「保育業界の2025年問題」が来年に迫ってきています。
練馬区は他の自治体と異なり、大江戸線の延伸などまだまだ発展の余地があり、今後も人口が増加することが見込まれています。しかしながら、区内でも地域間で発展に差が生じることが予想され、また、少子化・人口減少という全国的な状況を考えると、近い将来、練馬区にも大きな影響が及ぶと考えられます。今後、園児数が減少し、定員充足率がさらに下がれば、保育園の経営悪化につながることは避けられません。
これまでのように黙っていても園児が集まる時代は終わり、施設側が自ら工夫して確保していく必要があります。単に保育を提供するだけでなく、立地や設備などのハード面に加えて、幼児教育などのソフト面でも付加価値を高め、差別化を図ることが求められます。
練馬区の保育所等の多くは民間施設であり、民間企業によって保育行政が支えられています。経営悪化が大きな問題とならず、ソフトランディングできるよう、課題が顕在化する前に出口戦略を検討する必要があると考えます。区として、保育所等を取り巻く現状や今後の見通しについて、お考えをお伺いいたします。
【答弁】
日本全体で少子化が進む中、区の出生数も減少傾向が続いています。一方、共働き家庭の増加等に伴い、保育ニーズは依然として増加し、多様化しています。区は、子育てのかたちを選択できる社会の実現に向け、力を尽くしてまいりました。
保育については、前川区長就任以来、待機児童ゼロを区政の最重要課題の一つに掲げるとともに、区独自の「練馬こども園」を創設し、幼児教育、保育の一元化に取り組んで来ました。あわせてヽ「待機児童ゼロ作戦」の展開などにより、本年4月、4年連続で待機児童ゼロを達成しました。引き続き、待機児童ゼロを維持するとともに、令和8年度から導入される「こども誰でも通園制度」の動向等を注視し、対応を検討してまいります。今後も民間の力を活用し、多様なニーズに応える保育サービスの充実に取り組む考えです。今年度末に策定する第3期子ども・子育て支援事業計画の中で、地域や年齢ごとの需給を踏まえて、様々なサービスの供給量を示し、その確保に取り組んでまいります。
【質問】「練馬こども園職員に対する家賃補助制度」について
今年度から、我が会派の要望により、練馬区独自の取り組みとして、練馬こども園の職員に対する家賃補助が実施されていることに感謝申し上げます。
本制度は、採用10年目までの保育士や幼稚園教諭に対し、1人当たり月額最大6万2千円を補助するというものです。同様の制度として、東京都や国が実施する「保育士宿舎借り上げ支援事業」がありますが、こちらは1人当たり月額最大8万2千円の補助で、採用年数に制限はありません。
幼稚園・保育園業界では、人材の確保と育成が最重要課題の一つとなっており、各園が職場環境の改善に力を入れて、長期的に働いてもらうための取り組みを進めています。しかし、採用から10年目という制限があることで、10年目と11年目の職員の間で給与水準に大きな格差が生じ、処遇の逆転が発生してしまう可能性があります。そのため、10年を迎えた職員が園を離れてしまうリスクが懸念されます。職員の長期雇用は職員自身、園、そして子供たちにとっても大きなメリットがあります。長期雇用の阻害要因となってしまう『採用10年目』という制限を撤廃していただきたいと考えますが、区のお考えをお伺いいたします。
【答弁】
職員の処遇等にかかる幼保格差の解消については、本来、国の責任で実施すべきものでありますが、各園の職員確保を支援するため、国に先駆け区独自に家賃補助制度を開始しました。この取組が功を奏しヽ今月中に当初計画の1園を上回る4園を練馬こども園として認定し、30園となります。
本制度は、国の基準を参考に採用10年目までの職員を対象としてぃますが、国や都の財政的補助がないため、事業拡充については課題があります。引き続き、国や都に宿舎借り上げ支援事業の対象拡充を求めてまいります。
【質問】「未就学児童の療育と保育の両立」について
以前、発達障害のある未就学児を持つ保護者から、「子供を療育に通わせたいが、そのためには仕事を諦めざるを得ない」というご相談を受けたことがあります。療育施設では長時間の預かりが難しいため、保護者はフルタイムの仕事を諦めてパートタイムに移行するか、仕事を続けるために療育を諦めるかという選択を迫られます。中には、仕事を辞めることができないため、保育園に預けながら有休を使って療育に通わせている方もいますが、その負担は肉体的にも精神的にも大きく、十分な療育を受けさせることが難しいのが実情です。
文部科学省の学校基本調査によると、全国の特別支援学級に在籍する児童生徒数は、平成25年度の17万5000人に対し、令和5年度には37万人と2倍以上に増加しています。また、発達障害が含まれる「自閉症・情緒障害」の児童生徒数も、10年間で2.6倍に増加しています。全体の児童生徒数が10年間で1割も減少している一方で、発達に課題を抱える子供たちは大幅に増加しており、この傾向は今後も続くと予想されます。そのため、共働きが当たり前の今後の世代においては、療育と保育の両立に悩む家庭がますます増えていくと考えられます。
練馬区において、保育の量は十分に提供できていますので、これからは、このような家庭に対して療育も保育も両方できる選択肢を与えることが、今後求められる保育の質の向上につながると考えます。療育が可能な保育園の実現に向けて、ご検討いただきたいと考えますが、区のご所見をお伺いいたします。
【答弁】
現在、障害児の療育は児童発達支援事業所や放課後等デイサービスなどの通所事業所等で行っています。また、課題を抱える子どもに対して、心理士等の専門職が保育所等を訪問し、支援する保育所等訪問支援事業も行っています。
療育は障害児一人一人に対する日常生活や社会生活を円滑に営むための福祉的な援助でありヽ専門スタッフが必要となることから、保育所で担うことは難しいと考えています。
引き続き、関係機関との連携を密にし、必要な支援に繋いでまいります。
【質問】「保育園の経営支援」について
先日、杉並区で認可保育園を6園運営している社会福祉法人「風の森」を視察しました。この法人が運営する保育園では、国の配置基準の2倍の保育士を配置し、子供たちに対してきめ細やかな保育を提供しています。また、ICTを活用し、業務の効率化・生産性の向上を図るなど、働き方改革を進めています。その結果、週休2日制、60分の休憩、残業なしを実現し、子育て中で残業や夜勤が難しい保育士でも働ける労働環境を整備しています。そのため、保育業界の大きな課題である保育士の確保については、求人を出せば定員の20倍近い応募があり、離職率も非常に低いため、全く困っていないとのことです。
なぜ保育士を国の配置基準の2倍も配置できるのかというと、国や東京都、杉並区の助成制度を最大限に活用し、補助金を獲得しているからです。しかし、同様の取り組みを行っている保育園は少なく、その理由の一つとして、助成制度が国や都、区ごとに縦割りで複雑であり、また、制度が頻繁に変更されるため、全体を把握して経営に活かすことが難しいことが挙げられます。
そこで、練馬ビジネスサポートセンターのように、保育課において、各種助成制度に精通し、経営支援を行う窓口の設置を要望いたしますが、区のお考えをお伺いたします。
【答弁】
保育所の運営に当たっては、国や都の補助金等を活用した保育士等の処遇改善のほか、国の基準に上乗せして財政支援しています。
活用できる補助内容は、私立認可保育所や地域型保育事業所などそれぞれ異なるため、保育課に各担当係を設け、補助制度などの相談に応じています。引き続き、丁寧な案内に取り組んでまいります。
2 教育について
【質問】「中学校の教科書採択」について
今年は、4年に一度の新しい中学校教科書を採択する年にあたり、先月、令和7年度から区立中学校で使用する教科書の採択が行われました。教科書は、学校教育の基盤として不可欠な教材であり、教育の質を高める重要な役割を果たしています。また、子供たちが自己肯定感を育み、日本人としての誇りやアイデンティティを養う上でも、大切な存在です。教科書の良し悪しは、子供たちの興味関心や学力に大きな影響を与え、その将来をも左右する可能性があり、教科書採択は非常に重要なものとなっています。
採択にあたっては、公正性を確保するため、厳密な手続きが求められています。
練馬区では、校長や教員、保護者などで構成される教科書協議会と調査委員会の調査および答申に基づき教育委員会が採択を行っています。委員の皆さんは、当然ながら、子供たちのことを第一に考えて取り組んでいると思いますが、教科書を実際に使うのは子供たちです。
令和5年に施行された「こども基本法」では、子供の意見表明の機会を年齢や発達の程度に応じて確保し、その意見を尊重することが基本理念として掲げられています。また、子供施策の策定に際しては、子供の意見を反映する措置を講ずることが、国や地方公共団体に義務付けられています。小学1年生にとっては難しいかもしれませんが、中学生であれば、どの教科書がいいか、自分の意見を言うことが十分にできます。次回の教科書採択時には、子供たちの意見を反映できるよう、今から方策をご検討いただきたいと考えますが、区のお考えをお伺いいたします。
【答弁】
こども基本法の趣旨を踏まえ、子どもが意見表明する機会を確保することは重要と考えています。一方、現行の制度上、各教科書発行者が自治体に送付する教科書見本の数は国により上限が定められています。限られた期間、冊数の中で法定の展示会に加え、子どもが閲覧し、意見を述べる機会を設けることは困難です。教科書を利用する当事者として、子どもにレイアウトや重さなど使いやすさについて意見を聴取する方策については、今後検討してまいります。
【質問】「教員の質」について
教員不足が深刻な社会課題となっており、令和7年度の東京都教員採用試験の応募倍率は過去最低の2.6倍を記録しました。その結果、学校現場では教員不足が顕著となり、東京都は採用人数を増やす対策を講じましたが、それでも20人程度の欠員が生じています。このような状況下で、文部科学省は新人教員の授業時間を削減するとともに、教員全体の総数を増やす方針を発表しました。しかし、教員のなり手が不足している現状で募集人数を増やすことは、応募倍率のさらなる低下を招き、教員の質、さらには、教育の質の低下を招く重大な問題につながります。区として、教員採用や人材育成を独自に強化し、教員の質の向上を図る必要があると考えますが、教育委員会としての課題認識と今後の対策についてお伺いします。
【答弁】
全国的に教員不足の問題が深刻化する中、区として、教員一人一人が誇りややりがいをもって職務に従事できる環境を確保することが不可欠であると考えています。これまでも、教員の業務負担軽減のため、様々なサポート人材の配置・増員やICTを活用した業務改善のほか、校長経験者を教育アドバイザーとして学校へ派遣し、若手教員の授業力向上への指導や心のサポートを行うなど。人材育成にも力を入れてきました。今後もこうした取組を拡充してまいります。
【質問】「生きる力の教育」について
ChatGPTが登場してからまだ2年しか経っていませんが、生成AIは社会に多大な影響を与え、変化をもたらしています。AIはまだまだ学習フェーズから推論フェーズに移行し始めたばかりであり、今後さらに加速度的に進化し、多くの分野でイノベーションを引き起こし、これまで予想もつかなかった社会へと発展していくことが予想されます。このような社会の変化が激しく、未来の予測が困難な時代を生き抜くために、子供たちには知識だけでなく、変化する状況を適切に把握し、課題を発見し、解決策を導き出す力、つまり、新たな道を切り拓く「生きる力」が必要です。
現在の学習指導要領が最も重視している「主体的・対話的で深い学び」は、まさにこの「生きる力」を身に着けるために有効な学びとなっています。しかし、学校現場や教員の力はまだ発展途上であり、さらなる向上が求められています。今年、我が会派は、全国初の公立校で国際バカロレアを導入した「札幌市立札幌開成中等教育学校」を視察しました。そこでは、科目を問わず、授業中に至るところでディスカッションが行われ、答えのない問いに対して自分の考えを導き出す訓練が積み重ねられていました。国際バカロレアはまさに「主体的・対話的で深い学び」を高いレベルで実践している教育です。公立学校で導入する意義として、札幌開成中等教育学校で培った国際バカロレアの教育を、異動した教員が他の学校に広めることで、市全体の教育水準を向上させることが期待されています。他にも、目黒区では「40分授業午前5時間制」を導入していたり、渋谷区では今年から「総合的な学習の時間」を2倍以上に増やすなど、様々な公立学校が、知識を教え込む『一方通行型授業』から、『子供たちが主体的に学びを深める学習』へと転換し、「生きる力」を養う教育へと大きく舵を切っています。練馬区においても、将来の子供たちの力となる質の高い「主体的・対話的で深い学び」を提供するため、大胆な教育改革を進めるべきであると考えますが、区のお考えをお伺いいたします。
【答弁】
現行の学習指導要領では、変化の激しい社会において未来社会を切り拓くための資質・能力を育成するために、主体的・対話的で深い学びの実現が求められています。区内の学校では、児童生徒が、自ら学習計画を立てて、主体的に学習に取り組む授業、自分の考えを広げ深めるための少人数での話合い活動。地域や学校の特色、児童生徒の興味・関心に応じた題材を取り入れた探究的な学習などに積極的に取り組んでいます。
全国学力・学習状況調査の結果では、「課題の解決に向けて、自分で考え、自分から取り組んでいる」と肯定的に回答した割合が、この5年間で、小学校では77.2%から81.5%、中学校では 73.1%から80%まで増加しています。今後も主体的・対話的で深い学びの実現に向けて取り組んでまいります。
3 学校応援団と学童クラブについて
【質問】「学校応援団の在り方」について
学校応援団は、もともと学校開放運営委員会が行っていた学校開放事業と、児童放課後等居場所づくり事業、いわゆる「ひろば事業」を統合した組織です。その立ち上げには、地域ごとに多くの議論がなされ、多大なる地域の方々のご支援とご協力を得て、大変な苦労の末に実現されました。しかし、学童クラブの校内化と定員拡大を目指して、ねりっこクラブ事業が創設され、その結果、統合されていた学校開放事業とひろば事業は再び分離され、学校応援団には学校開放事業のみが残る形となりました。
ねりっこクラブは、学童クラブの待機児童対策として非常に重要な事業ですが、残された学校応援団は新しいスタッフの確保が難しく、高齢化が進む中で、今後の事業継続が懸念されるなど、多くの課題に直面しています。現在、厳しい状況にありながらも、地域の方々のご努力によりなんとか事業を支えていますが、現場は疲弊してきています。
学校応援団の役割自体が設立当初から大きく変化している現状を踏まえ、早急に新たな学校応援団の在り方を示し、組織改革を進めることが必要だと考えますが、区のお考えをお伺いします。
【答弁】
学校応援団は、平成16年度から平成23年度にかけて、地域の核として開かれた小学校づくりを推進するため学校開放運営委員会を母体とにして設置されました。校内で児童を見守る「ひろば事業」を新たに実施し、放課後の安全・安心な居場所を提供する役割を担ってきました。
平成28年度からは、すべての小学生に放課後や長期休業中の居場所を提供するため、「ねりっこクラブ」の全校実施に向けた取組を開始しました。学童クラブとひろば事業を一体で運営し、長期休業期間も「ねりっこひろば」を実施することで、子ども達の安全・安心な居場所の拡充を図っています。「ねりっこひろば」の運営には、引き続き学校応援団スタッフが中心的メンバーとして携わっています。
一方、学校応援団を含め、学校現場では、地域の多様な人材との連携により教育活動等が支えられていますが、担い手の重複や、担い手の不足といった共通の課題を抱えています。
こうした課題解決に向けて、保護者や地域住民が学校運営に参画する「学校運営協議会制度」の実証を3校で実施しました。その結果等を踏まえ、学校運営協議会制度の仕組みを活用した地域協働のおり方を検討してまいります。
【質問】「学童クラブにおける長期休業期間中のお弁当の注文」について
毎年、夏休み前になると、新一年生の保護者から「学童クラブで夏休み期間中にお弁当を注文できるようにしてほしい」というご相談を多数いただきます。このような相談には、すでに導入している学童クラブの状況や導入までのプロセス、受注事業者の情報を提供していますが、「保護者の取りまとめができない」「学童クラブ運営事業者の了承が得られない」「受けてくれる受注事業者が見つからない」などの理由から、多くの保護者が導入を断念しています。これまで、すべての学童クラブでお弁当の注文ができるよう求めてきましたが、一部で既に導入されているため、区主導ですべての学童クラブに導入することは難しいとの見解が繰り返し示されてきました。
練馬区では「子育てのかたちを選択できる社会の実現」を掲げ、最近では保育園において紙おむつや食事用紙エプロンのサブスクリプションサービスが利用可能になりました。これは、練馬区が事業者を選定し、保護者が事業者と直接契約を結び、各保育園が商品の受け取りと提供を行うという仕組みで行われています。学童クラブにおけるお弁当の注文についても、同様のスキームで十分に導入可能であると考えます。ぜひ、全学童クラブでの導入をご検討いただきたいと考えますが、区のご所見をお伺いいたします。
【答弁】
区は、これまで、保護者と事業者の調整が整い、保育に支障なく対応できる学童クラブで順次昼食を提供してきました。咋年、国が学童クラブにおける昼食提供の事例を公表したことが契機となり、注文・配送・決済まで一体となった配食サービスが民間から提供されるようになりました。こうした民間サービスを活用した昼食提供について検討してまいります。
4 重層的支援体制整備事業と生活支援記録法F-SOAIPについて
【質問】「重層的支援体制整備事業」について
現在、一人親世帯や高齢者単身世帯、高齢者夫婦世帯の増加など、家族や社会状況の変化によって、家族や地域のつながりが弱まっています。一方で、支援制度は「高齢者支援」「困窮者支援」など、基本的に対象者の属性ごとに設計されているため、縦割りの構造が生じ、その間には隙間が生じています。この結果として、一人ひとりの多様かつ複雑なニーズには応えることができない状況にあります。
こうした社会変化に対応し、地域住民の複雑かつ複合的な支援ニーズに対応するため、国は、縦割りを超えた支援体制の構築を進め、地域共生社会の実現を目指しています。その一環として、社会福祉法が改正され、令和3年度に「重層的支援体制整備事業」が創設され、全国の自治体で取り組みが進められています。
練馬区でも、昨年度から本事業の実施に向けた準備が進められています。重層的支援体制整備事業の要は、複数の機関が協働する支援体制の構築です。体制の構築にあたっては、行政機関のみならず、民間企業や地域団体との連携も重要であり、新たな「練馬区モデル」の構築に期待しています。
現在、練馬区では、重層的支援体制整備事業を活用し、どのようなビジョンを持って支援体制を構築しようと考えているのでしょうか。また、国の重層的支援体制整備事業実施団体となるために、どのような取り組みが必要なのかお伺いいたします。
【答弁】
国は、令和2年に社会福祉法を改正し、子ども・子育て、介護、障害、生活困窮などの、包括的な支援体制の整備を行う新たな事業として「重層的支援体制整備事業」を創設しました。本事業は、相談支援や地域づくり事業、アウトリーチ等を通じた継続的支援事業等を、一体的に実施する市区町村に対し、国が補助金を交付するものです。
区は、令和5年度から、ひきこもりや8050問題など複合的な課題を抱えながら、支援が行き届かない世帯への支援を強化するため、練馬区社会福祉協議会の地域福祉コーディネーターによるアウトリーチ支援や社会参加のきっかけづくりになる「あすはステーション」における居場所の提供など、国が求める事業を、一体的に実施しています。
国の重層的支援体制整備事業実施団体に位置付けられるためには、区が、事業実施計画を策定することが必要です。
本年度策定する練馬区地域福祉計画に合わせて、実施計画を策定してまいります。
【質問】「生活支援記録法F-SOAIP(エフソ・アイピー)」について
重層的支援体制整備事業により、複合的な課題を抱える世帯に的確な支援を提供するためには、複数の支援機関の連携が不可欠です。多機関・多職種連携において重要なことは、支援対象者の情報をいかに正確に記録し、共有するかです。そこで、相談記録の共通言語として「生活支援記録法 F-SOAIP」の採用を要望いたします。
F-SOAIPとは、多職種が協働して行う対人援助の実践過程において、生活モデルの観点から当事者のニーズ、観察、支援の根拠、働きかけ、そして当事者の反応などを、「フォーカス」「主観的情報」「客観的情報」「アセスメント」「介入実績」「計画」という項目で可視化する記録法です。
従来、ケアマネジャーによる介護記録はフォーマットが統一されておらず、叙述形式で記録されるため、多職種スタッフとの情報共有や引き継ぎが困難になることが多く、また、主観的な記録が多くなるという課題もありました。F-SOAIPは項目形式で記録するため、多職種間の連携や課題の見える化が促進され、ケアマネジメントの質や生産性の向上が期待されるだけでなく、業務のDX化の促進や記録業務の負担軽減にもつながります。厚生労働省も、介護分野における生産性向上に活用できるツールとして紹介しています。区内でも、現場のケアマネジャーが中心となって、F-SOAIPの導入に向けた研究を進めています。深刻な人材不足が続く介護福祉現場の改善のために、区として、F-SOAIPの普及に向けて、研修会の開催などに取り組まれたいと考えますが、区のお考えをお伺いいたします。
この記録法はもともと介護記録に採用されていましたが、足立区ではケースワーカーによる被保護者支援記録に、また、品川区では高齢福祉分野にとどまらず、障害、子供関連、生活保護の各部署でF-SOAIPが活用されています。練馬区においても、福祉や子供関連など幅広い分野においてF-SOAIPを導入すべきであると考えますが、区のご所見をお伺いいたします。
【答弁】
子ども・介護・障害・生活困窮など支援の現場において、統一した記録法を用いることは、業務の効率化や多機関連携の観点から、重要であると認識しています。
練馬区介護人材・研修センターでは、ケアマネジャーに対し、相談スキルをあげる研修、ケアマネジメント研修など日常支援に関する様々な研修を実施しています。今後も、現場の意見を伺いながら、研修内容を充実させてまいります。
記録標準化の取組である、F-SOAIPを導入した自治体からは、各分野で必要となる記録内容が異なるなど、多分野に展開するには課題があると聞いています。
今後、DXを活用した支援業務の効率化について検討してまいります。
5 地域公共交通について
【質問】「地域公共交通」における「バス運転手の確保支援」について
地域公共交通は、区民にとって重要なインフラであり、日常生活に欠かせない存在です。その利便性は、地域の経済活動や社会的つながりに影響を与え、地域の活性化や住みやすさにも直結しています。これまで区は、公共交通空白地域の改善など、公共交通の利便性向上に取り組んできました。
しかし、近年の人手不足の影響を受け、地域公共交通を支える路線バスには減便や廃止の波が押し寄せています。国際興業に委託しているみどりバスの北町ルートと氷川台ルートにおいては、今年4月から減便となっています。また、各バス会社の路線バスでもさまざまな区間で減便や廃止が進行しています。
バス運転手は以前から、給与が低く、労働時間が長いとされており、担い手の確保が大きな課題でした。そこに、今年4月からドライバーの年間時間外労働時間が960時間に制限される「2024年問題」が運転手不足に拍車をかけています。バス交通は区民の大切な公共交通であるため、練馬区としてもバス事業者と協力し、バス運転手の確保に取り組むことが求められています。
全国の成功事例を見ると、その重要な要素として女性運転手の確保が挙げられます。バス運転手に対するネガティブなイメージを改善し、早朝・深夜勤務や長時間労働、残業をなくすなど、子育て中の若い女性でも働きやすい環境を整えることで、確保が実現しています。これまで男社会の中にあったバス事業者が女性運転手を受け入れるためには、女性専用の休憩室やトイレの設置など、職場環境の整備が不可欠です。区として、女性運転手確保に向けた環境整備を行うバス事業者に対して、整備補助を行うべきであると考えますが、区のご所見をお伺いいたします。
【答弁】
運転手の不足等により、全国的にバス路線が廃止・縮小となっています。区においても、一般路線バスの一部やみどりバスが減便となりました。バス交通を維持する上で運転手の確保は大きな課題です。
バス事業者は、労働時間の短縮や賃金引上げなど労働環境の改善、入社後の大型二種免許の取得支援など、運転手確保のため様々に取り組んでいます。区においても、ホームページ、SNSや、練馬まつりなどのイベントにおいて、バス事業者の採用広報を支援していきます。
女性運転手は、地域によって、増加している例もありますが、区内で運行しているバス事業者では、極めて少ない状況です。これまで整備が十分でなかった、女性用の休憩室やトイレの設置などを含め、働きやすい職場環境をつくることで、女性運転手の就労促進が期待できます。
バスは周辺区市にまたがり運行されていることから、今後、関係自治体と連携して、バス事業者による環境整備を促進する支援のあり方について議論していきます。
こうした取組を行った上でも、運転手不足は今後も続く見通しであり、バスのおり方の見直しが不可避となっています。持続可能な地域公共交通に再構築することが必要です。
区の特性にあった、誰もが移動しやすい公共交通の構築を目指して、デマンド交通など新たな移動手に叩奸入の検討を含めて、令和8年度を目途に、地域公共交通計画を策定します。