【解説】いまさら聞けない「103万円の壁」をはじめとする「年収の壁」問題

おはようございます。
練馬区議会議員の佐藤力です。

本日は、多くの方が関心を持つ「年収の壁」について、その内容や影響、そして現在の課題について詳しく解説します。
特に、103万円の壁を含む年収の壁は、パートやアルバイトをしている方々にとって重要なテーマです。


年収の壁とは

「年収の壁」とは、一定の年収を超えると社会保険の加入義務や税金負担が増えることで、手取り収入が減少する現象を指します。このため、特定の年収を超えないように働き方を調整する人が少なくありません。

日本で特に話題になる年収の壁は主に次の3つです。

  1. 税金に関わる壁
  2. 社会保険に関わる壁
  3. 配偶者手当に関わる壁

以下、それぞれの壁について詳しく説明します。


税金に関わる壁

税金に関わる年収の壁には、100万円、103万円、150万円、201万円があります。

  • 100万円の壁: 年収が100万円を超えると、住民税の負担が発生します。
  • 103万円の壁: 年収が103万円を超えると所得税がかかるようになり、同時に配偶者控除が適用外となります。ただし、その代わりに「配偶者特別控除」が適用されます。
  • 150万円の壁: 年収が150万円を超えると、配偶者特別控除の控除額が段階的に減少します。
  • 201万円の壁: 年収が201万円を超えると、配偶者特別控除の対象から完全に外れます。

社会保険に関わる壁

社会保険に関する年収の壁には、106万円と130万円があります。

  • 106万円の壁: 従業員51人以上の企業などにおいて、年収が106万円(月額8万8000円)を超え、週20時間以上働く場合、配偶者の扶養から外れて厚生年金や健康保険への加入が義務付けられます。この影響で保険料の負担が増えますが、年収がおおむね125万円以上になると、手取り収入が元に戻ります。
  • 130万円の壁: 従業員51人未満の企業などで働く場合、年収が130万円を超えると扶養から外れ、国民年金や国民健康保険への加入が求められます。

なお、現在、厚生労働省は106万円の要件および企業規模要件(従業員50人以上)の撤廃を検討しています。これが実現すれば、週20時間以上働けば年収や勤務先に関わらず厚生年金に加入することになります。


配偶者手当に関わる壁

配偶者手当や家族手当などの支給対象は、多くの場合、年収103万円または130万円を超えると支給対象外となります。これらは企業独自の制度であり、収入制限や支給条件は会社ごとに異なります。


「103万円の壁」の現状と課題

現在注目されている「103万円の壁」ですが、この年収条件は平成7年に引き上げられて以来、約30年間据え置かれたままです。その間、最低賃金は大幅に上昇しており、平成14年の全国平均663円に対し、令和5年には1,004円と、50%以上増加しました。しかし、103万円の条件が変わらないため、次のような問題が発生しています。

  • 働きたくても働けない: 配偶者控除の範囲内に収めるため、労働時間を抑える必要があり、収入が増えません。
  • 労働時間の減少が人手不足を助長: 雇用する側にとっては労働時間が短縮されることで、人手不足が深刻化しています。

今後の課題

年収の壁の引き上げについては、財務省が税収減を懸念して慎重な姿勢を示しています。一時的に税収が減少する可能性はありますが、長期的には所得の増加が市場を活性化させ、経済成長を通じて税収が自然に増加するという考え方もあります。

最低賃金の引き上げと連動して年収の壁を見直すことが、労働者の収入増加や経済の好循環に繋がると考えられます。本来なら、自民党が率先して議論を進めるべき重要な課題であり、財務省に左右されず、英断を期待しています。


まとめ

年収の壁は、多くの人々の働き方や生活に直結する重要な課題です。特に「103万円の壁」は、時代の変化に取り残された制度と言えます。この壁を見直し、より柔軟で現代的な仕組みを整えることで、国民がより安心して働き、生活できる社会を目指していく必要があります。

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