高校生の医療費無償化|何が問題?いつ開始?


こんばんは。
練馬区議会議員の佐藤力です。

今週の佐藤力チャンネルのテーマは、「高校生の医療費無償化」についてです。
東京都が突然表明した高校生の医療費無償化の内容と課題、開始時期などについてお話していきます。


●高校生の医療費無償化

東京都が突然、高校生の医療費無償化を表明し、混乱が広がっています。
なぜ混乱が広がっているのかといいますと、実際に実務を担当する区市町村に事前の説明がなかったことが挙げられます。

現在、東京都においては、中学3年生までの児童を対象に医療費無償化を実施しています。
各区市町村が発行する「マル乳・マル子」という医療証と保険証をもっていれば、病院での医療費が無料になるという制度です。

今回の混乱の一番の問題は財源をどうするかが全く示されていなかったことにあります。
23区内では、中学3年生までは自己負担なしで医療を受けられるのですが、実はその財源は3つに分かれています。
一つ目は国民健康保険などの制度による負担分。二つ目が残りの窓口3割負担分。そして、三つ目が所得制限による一回200円の自己負担金です。

まず一つ目の国民健康保険などの制度による負担分については、皆さんが払っている保険料や自治体の納付金、国の公費などによって賄われています。
二つ目の窓口3割負担分については、一応、東京都が財源を手当てしている形となっています。詳しくはあとで説明したいと思います。
そして、三つ目の所得制限による一回200円の自己負担金についてですが、そもそも医療費無償化の制度に所得制限があるのを知っている方は、特に、23区内にお住いの方で知っている方はそう多くはないのではないかと思います。

23区内では、所得に関係なく子供たちは一律に無料で医療が受けられると思いますが、実は、所得制限が設けられており、一回200円の自己負担金というものが存在します。
しかしながら、23区においては、それぞれの区の財源でその自己負担金を助成しているため、所得に関係なく完全無償化となっています。
一方で、都内でも多摩地域においては、自己負担金を求める自治体もあります。

そして、一番大事な医療費3割負担分について、先ほど、一応、東京都が財源を手当てしている形となっているとお話しました。
表現が微妙なのは、本当に全額手当されているかは各自治体では分からないからです。
というのも、一般的な制度であれば、この制度に対していくらを助成するといった使途が明確になった助成金が各自治体に分配されるわけですが、医療費助成金については、特別区財政調整交付金によって分配されているため、いくら助成されているのか明らかにされていません。

ここが非常に分かりにくいところなのですが、東京都の23区は、これまで大阪府や大阪市が取り入れようとしていた「特別区制度」を取っています。
この制度により、非常に簡単に説明すると、一部、税を徴収する担当と、行政事務を執行する担当にずれが生じているため、特別区財政調整交付金という制度によって是正を行っています。
これは、法人税など特別区が徴収すべき税金を東京都が代わりに徴収し、その税収を財源に、業務負担や財政状況などに応じて、東京都と特別区に再分配するという制度です。

この特別区財政調整交付金は、金額の試算の項目は示されるものの、一括してそれぞれの区に分配され、内訳までは東京都が開示してくれないため、先ほどの話に戻りますが、一応、無償化にかかる費用は助成してくれているだろうということになります。

ちなみに、中学3年生までの医療費無償化によっていくら経費がかかっているのかというと、練馬区では、来年度予算ベースですが、約32億円となっています。

では、なぜ突然の東京都の発表に混乱が広がったのかというと、この財源の内訳や所得制限など制度設計についての話が全くされていなかったことにあります。
そのため、今月3日、東京都は、それらを明らかにした制度設計案を発表したのですが、これもまた、調整不足の内容で、反発を招く結果となっています。

東京都が示した制度設計案とは、「所得制限を設け、200円の自己負担を求めること」「財源は都と区市町村が2分の1ずつ負担すること」「ただし、令和5年度から3年間は東京都が全額負担すること」といったものです。

●制度の課題

一番の問題は、財源負担を都と区市町村が折半することです。

財源が潤沢にあるのであれば、もちろん歓迎すべき制度です。
しかしながら、新型コロナウイルス等の影響で、日本経済の先行きは不透明で、非常に厳しい財政状況が今後も続くと予想されます。
ただでさえ、財政状況が厳しく、限られた歳入で、持続可能な行政運営のために四苦八苦している中で、新たに財政負担を強いられる状況は、よく検討しなければなりません。
にもかかわらず、一方的な、東京都の制度構築と財政負担を強いることは到底受け入れることはできません。
特別区長会も「制度が不明瞭」と批判していますし、都議会自民党も「区市町村との調整が足りない」との声を上げています。

さらには、そもそも子育て世代を呼び込みことを目的に導入すると東京都は説明していますが、それ自体がナンセンスであると考えています。
子育て世代を呼び込むということは、限られたパイをただ奪い合うだけです。
地方と比較し、財政的に豊かな東京都がパイの奪い合いに参戦したら、東京都にとってはいいかもしれませんが、日本全体においてはプラスにはなりません。
大企業が中小企業の市場に対して、価格競争を仕掛けるようなものです。

「売り手よし、買い手よし、世間よし」という近江商人の三方良しの考え方がありますが、自分さえよければいいというのはダメで、社会全体としてよくなるためにはどうしたらいいのかという視点をしっかりと加味することが、未来につながり、最終的には、自分に返ってきます。

本来やるべきことは、子育て世代を増やすためにはどうしたらいいかという視点を持ち、未来に向けた投資を積極的に行っていくことが重要であると考えています。
もし仮に、東京都が政治的な背景で高校生医療費無償化を実施するのであれば、所得制限を設けることなく、すべての経費を東京都が全額助成すべきであると考えます。
そうなるよう、しっかりと東京都に対して働きかけてまいります。

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